講演情報
[III-OR29-05]筋ジストロフィーにおける拡張型心筋症の発症リスク
○増井 大輔, 内山 弘基, 石川 貴充 (浜松医科大学 医学部附属病院 小児科)
キーワード:
拡張型心筋症、筋ジストロフィー、心不全
【背景】筋ジストロフィーの臨床経過では、心機能障害の進行により拡張型心筋症(DCM)やそれに伴う心不全を呈することがあり、特にデュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD)では予後規定因子としてきわめて重要である。【目的】筋ジストロフィー患者における心機能障害の特徴を明らかにし、DMDとその他の病型との比較を通じて臨床経過の違いを検討する。【方法】当科で2001年以降に筋ジストロフィーと診断された患者をDMDとその他の2群に分け、臨床像の比較検討を行った。【結果】合計40例が登録され、内訳はDMD24例、その他16例(Becker型6例、福山型7例、筋強直性3例)であった。年齢はDMD群19.4±9.7歳、その他16.0±7.9歳(p=0.222)であり、ベースライン特性のうち心拍数はDMD群で有意に多かった(DMD群100.6±16.9/分, その他87.4±16.6/分, p=0.020)。各種検査データのうちNT-proBNPはDMD群で有意に高く(中央値DMD群94.5pg/mL, その他39.0pg/mL, p=0.042)、左室駆出率はDMD群で有意に低かった(DMD群57.5±15.6%, その他65.6±9.5%, p=0.048)。経過中の死亡はDMD群で2例、その他で1例(8.3% vs 6.3%, p=0.652)であった。DCMを発症した症例はDMD群で9例(38%)、その他で1例(6%)であり(p=0.026)、DCM回避生存期間はDMD群で有意に短かった(平均値DMD群19.9年, その他34.2年, Log Rank p=0.026)。DCMを合併した10例の日常生活動作(ADL)は6例が寝たきり、3例が車椅子、1例が歩行可能であった。【結語】医学的管理や心不全治療の進歩により、筋ジストロフィー全体の生命予後は向上しているものの、DMD患者は他の病型に比べて心機能障害の発症リスクが高く、特にDCMの発症率が有意に高いことが確認された。また、本検討の中ではADLが比較的保たれた状態で心不全が進行し、治療戦略に難渋する患者も存在した。演題発表では個々の心不全治療についても焦点を当て報告する。