講演情報

[III-OR29-06]シクロホスファミド心筋障害早期発見における薬剤投与後QTc延長所見の有用性

川村 順平, 清水 大地, 奥田 依里, 高橋 宜宏, 中江 広治, 上野 健太郎, 岡本 康裕 (鹿児島大学病院 小児科)
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キーワード:

シクロフォスファミド、薬剤性心筋障害、QTc

【背景】シクロホスファミド (CY) は、小児がん患者に用いられ、7~28%に急速に重症心筋障害を引き起こす。アントラサイクリン系薬剤投与後の心電図QTc延長は心筋障害の早期発見に有用と報告されているが、CY心筋障害では不明である。【目的】CY心筋障害早期発見に関して、QTc延長の有用性を検討する。【方法】2010年1月1日~2023年12月31日に、当科で大量CY療法(100 mg/kg以上)を受けた68名を対象とした。治療前とCY投与翌日に12誘導心電図を測定し、QTc延長群 (P群) と非延長群 (N群) に分けた。QTcは2誘導・V5誘導の計測値を用い、Fridericia補正値を用いた。両誘導における平均QTcの投与前後の差をΔQTcで示した。計測値は中央値 [四分位範囲] で示した。心筋障害はESC 2022 コンセンサスに準拠し、(1)心エコーでLVEFが50%未満かつ10%以上低下、または(2)血液検査でBNP 100 pg/mL以上もしくはNTproBNP 300 pg/mL以上、と定義した。【結果】心電図記録欠損の8名、心電図記録不良の4名、WPW症候群の1名を除外し、55名 (年齢中央値 9歳) を対象とした。P群(ΔQTc +30 [+12, +46] ms)は25名で、N群(ΔQTc -17 [-34, -10] ms)は30名であった。両群で年齢、疾患内訳、CY投与総量、血清K・Ca値に有意差はなかった。P群では7名(28%)がCY心筋障害を発症し3名(12%)が死亡した一方で、N群では発症者はいなかった (P = 0.002)。心筋障害発症者のCY開始から診断までの日数は、中央値4日であった。P群のΔQTcはCY心筋障害発症と有意な正の相関を示した(R=0.58, P<0.001)。P群のうち2名は投与翌日に診断基準(2)を満たし心筋障害と診断され、CYの一時中断と循環補助治療により改善した。【考察】CY投与後のQTc延長は、心筋障害初期変化として心筋細胞のイオンチャネルや細胞間結合の機能不全による再分極障害を示している可能性がある。【結論】ΔQTcは、CY心筋障害早期発見に有用な所見の1つとなり得る。