講演情報

[III-OR30-02]Fontan術後急性期管理における血管収縮薬の比較

吉田 周平1, 正谷 憲宏1, 松沢 拓弥2, 小森 悠矢2, 清水 淳3, 和田 直樹2 (1.公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 集中治療科, 2.公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 小児心臓血管外科, 3.公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 麻酔科)
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キーワード:

Fontan、ノルアドレナリン、バソプレシン

【背景】Fontan術後急性期では、自発呼吸の確立まで低心拍出状態となることが多い。当院では挿管下のままICUに入室し、早期抜管に努めている。当院では術直後の低心拍出状態に臓器灌流圧維持の観点から過去には血管収縮薬としてノルアドレナリン(NAd)を使用していたが、頻脈となりバソプレシン(AVP)に変更する症例が続いた。さらに、AVPはFontan周術期に胸腹水を減らす可能性が報告されている。そのため、2024年6月から全例でAVPを第1選択とした。Fontan周術期にはAVPが有用という報告が散見されるが、過去の当院のようにNAdを使用している施設も少なからず存在し、その比較は報告がない。
【目的】Fontan術後急性期の血管収縮薬の種類による臨床経過の違いを比較検討する。
【方法】2021年1月1日から2025年1月31日の4年間で初回Fontan手術後の患者を対象に患者背景およびドレーンの挿入期間、手術当日から術後2日目までのドレーン排液総量と水分投与量、挿管期間などの臨床経過をNAd使用群(N群)とAVP使用群(A群)で後方視的に比較検討した。
【結果】単心室患者に対する初回のFontan手術は61例に施行しており、追加で開窓術を要した3例、腹膜透析を使用した8例は除外した。重複使用あるいは双方未使用の5例を除き、N群は36例、A群は9例であった。両群間で開窓の有無や右室型単心室の割合に有意差はなかった。ドレーン挿入期間はN群で11(9-15)日、A群で10(8-14)日であり差はなかった。ドレーン排液量はN群で153(85-212)mL/kg、A群で48(32-131)mL/kg、水分投与量はN群で334(272-416)mL/kg、A群で267(248-321)mL/kg、挿管期間はN群で860(550-1257)分、A群で752(509-1056)分といずれも統計学的有意差があった (p<0.05)。
【結論】N群はA群に比して、術当日から術後2日目の急性期に多くの水分量を必要とし、かつ胸腹腔への漏出量も多かった。Fontan術後急性期の血管収縮薬としてNAdよりもAVPの方が適している可能性がある。