講演情報
[III-OR30-05]コンピュータ・シミュレーションを用いたフォンタン循環不全における左心補助の効果とフェネストレーションの関連性の検討
○清水 秀二1,2, 小谷 恭弘2, 堀尾 直裕3, 宮原 義典3, 笠原 真悟2 (1.国立循環器病研究センター 研究推進支援部, 2.岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科, 3.昭和大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター)
キーワード:
フォンタン循環、左心補助、フェネストレーション
【背景】フォンタン循環不全における左心補助循環の効果は、肺血管抵抗が非常に高い場合には限定的である。しかしながら、フォンタン循環における両心室補助法は未だ十分には確立されていない。【目的】コンピュータ・シミュレーションを用いてフォンタン循環における肺血管抵抗と左心補助の効果の関係を明らかにし、フェネストレーションの有無が補助循環中の血行動態に及ぼす影響を明らかにする。【方法】コンピュータ上にフォンタン循環のモデルを作成した。心房・心室は時変弾性モデルを、血管系は三要素ウインドケッセルモデルを用いて再現した。補助人工心臓およびフェネストレーションの圧流量関係は、非線形方程式を用いて記述した。肺血管抵抗を変化させ、左心補助の効果とフェネストレーションの影響について検証した。【結果】4.0 mmのフェネストレーションは、肺血管抵抗上昇時に、左心補助循環を維持するために必要な有効循環血液量(SBV)を低下させ(4.9 WU m2時に1560から1270 mL、5.9 WU m2時に1810から1450 mL)、中心静脈圧(CVP)を有意に低下させた(4.9 WU m2時に16.1から12.6 mmHg、5.9 WU m2時に19.1から14.7 mmHg)。一方で、動脈血酸素飽和度(SaO2)は有意に低下した(4.9 WU m2時に97.0から89.5%、5.9 WU m2時に97.0から88.7%)。フェネストレーション径が大きいほど、SBV、CVPに対する効果は大きくなるが、SaO2の低下も大きくなることが分かった。【結語】フェネストレーションを作成することで、肺血管抵抗の上昇に対して左心補助循環中のSBV、CVPを有意に低下させることができ、両心室補助を回避できる可能性がある。一方で、大きすぎるフェネストレーションはSaO2を過度に低下させるため、最適なサイズを見極める必要がある。