講演情報
[III-OR30-06]知的障害のない軽度発達障害と愛着障害をもち,終末期のかかわりに苦慮したfailed Fontanの1例
○白井 丈晶 (加古川中央市民病院 循環器内科)
キーワード:
フォンタン、終末期、神経発達症
【背景】faild Fontan症例の終末期において、本人および家族における苦悩は大きい。家庭環境の問題により養育環境が変遷し、精神的・社会的な支援が求められた神経発達症を有するfaild Fontan症例を経験したので報告する。【症例】20代男性。Dextrocardia、HLHS、CAVVに対し、9歳時にTCPC(EC 18mm)およびPMI(DDD)を実施。慢性的な低酸素血症を呈し、20歳時にはSpO2 70%前半。精神心理面では、WISC-IIIにてIQ 92で知的障害はないが、自閉症スペクトラムの傾向を示し、寮生活、里親制度、グループホームと生活環境が変遷した。【経過】15歳で循環器内科へ移行後、喀血・plastic bronchitisを繰り返し、在宅酸素療法を導入するも受容困難。20歳を迎えるにあたり、家族関係の悪化からグループホーム、単身生活と変遷し、服薬・体調管理の問題が顕著となった。SpO2低下、AVVR悪化を認め、PM電池交換・心房リード移植術後に呼吸不全を合併し、気管切開後に終末期の意思決定が課題となった。発達特性や愛着障害により意思決定が困難であり、代理意思決定者が不在でACP(Advance Care Planning)の適用が課題となった。主治医と多職種チームは、行政と連携し成年後見制度の活用を検討。最終的に家族との再会が実現し、終末期を家族と共に過ごす選択がなされた。【考察】本症例では神経発達症のある患者に対するACPの妥当性、代理意思決定者の役割、医療者の裁量範囲について、倫理的・法的な課題が浮き彫りとなった。最終的に家族の関与を得ることで、患者にとっての最適な終末期ケアを実現できたと考える。【結論】本症例は、発達障害や愛着障害を持つ先天性心疾患者の終末期ケアにおいて、多職種連携の重要性を示した。また、代理意思決定者不在時の対応策として、ルール作りの必要性が示唆された。