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[III-OR31-03]半閉鎖クリップを用いた両側肺動脈絞扼術の経験

岩城 隆馬, 岡田 翼, 久保 沙羅, 東田 昭彦, 松島 峻介, 松久 弘典 (兵庫県立こども病院 心臓血管外科)
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キーワード:

両側肺動脈絞扼術、半閉鎖クリップ、PDA

「背景」両側肺動脈絞扼術(bil.PAB)において、当院では従来0.4mm厚ePTFEシートから作成した2mm幅のbanding tapeを用いていたが、絞扼解除後も狭窄が残存し、フォンタン時の広範囲肺動脈形成を要する症例が散見された為、2024年3月より半閉鎖クリップを用いた絞扼に変更した。半閉鎖クリップを用いたbil.PABの有用性について検討する。「方法」2024年3~12月の期間において半閉鎖クリップを用いたbiPABを当院で施行した9症例を後方視的に観察した。原疾患は左心低形成症候群及び類縁疾患5例,大動脈縮窄/離断複合4例で男女比は7:2。biPAB施行時の日齢3 (0-9日), 体重2.52kg (1.73-3.35 kg) であった。「結果」肺動脈絞扼幅は左1.2mm; 4例, 1.3mm; 5例。右1.2mm; 7例, 1.3mm; 2例。手術時間は104分 (67-128分)であった。術後早期死亡症例を認めず,第1例目の左肺動脈絞扼が不十分であり、追加絞扼(1.3→1.2mm)を施行したが,2例目以降で術後の追加調整が必要な症例は無かった。9例中6例において肺動脈絞扼解除を伴う段階的手術に到達。内訳はNorwood手術4例,CoA/IAA修復2例で,術中所見では肺動脈絞扼術解除部は従来法に比して明らかに太く、肺動脈形成を要した症例を認めなかった。術後退院前のエコーにおいて左右それぞれの肺動脈血流は1.25 m/s (0.98-2.44 m/s), 1.26 m/s (1.2-2.57 m/s) と著明な加速を認めず,形態的な局所狭窄も認めなかった。「結論」半閉鎖クリップを用いたbil.PABは簡便且つ調節幅の客観性に富み、再現性の高い絞扼が可能である。現時点での症例数は限られるものの、絞扼解除後に絞扼部の拡大形成を要した症例はなく、患者の肺血管症の改善に寄与する術式と思われる。