講演情報

[III-OR31-05]当院における左心低形成性症候群の中長期成績と両側肺動脈絞扼術による影響の検討

小林 純子1,2, 門脇 幸子1,2, 黒子 洋介1,2, 小谷 恭弘1,2, 笠原 真悟1,2 (1.岡山大学学術研究院 医歯薬学域 心臓血管外科学, 2.岡山大学病院 心臓血管外科)
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キーワード:

左心低形成症候群、両側肺動脈絞扼術、肺動脈

【背景】HLHSに対し当院はprimary Norwood手術を基本方針とするが、出生時体重2.5kg未満、中等度以上の三尖弁逆流、狭小心房中隔欠損の場合はハイリスク例としてbilateral PA banding (bPAB)を先行し生存率の改善を図っている。HLHSの中長期成績を検討しbPABの影響について考察した。【方法】当院で1995年1月から2020年12月にBDGを施行したHLHS患者107例の中長期成績を検討した。【結果】全例でNorwood-RVPAS手術を施行し29例(27.1%)でbPABを先行させた。BDGは生後6[5-8]カ月、体重5.0[4.4-5.4]kgで行った。BDG前の肺血管条件はbPAB実施により有意差はないが、肺動脈形成術(bPAB(+): 20.7% vs. (-): 6.4%, p=0.03)および三尖弁形成術(bPAB(+): 37.9% vs. (-): 15.4%, p=0.01)の併施はbPAB(+)群で有意に多かった。BDG後の5年、10年、20年生存率は83.5%、80.2%、68.7%で、bPAB実施による生存率に差は認めなかった。観察期間中に88例(82.2%)(bPAB(+):82.7%、bPAB(-):82.1%)がFontan手術に到達した。Fontan前死亡14例、BDG takedown3例だった。次にFontan手術に到達した88例について検討した。Fontan時では肺動脈圧および肺血管抵抗に差はないがbPAB(+)群でPA indexが有意に低く(bPAB(+): 197[165-224] vs. (-): 232[184-273] mm2/m2, p<0.01)、中でも左肺動脈で有意に低かった(bPAB(+): 69[50-155] vs. (-): 91[60-128] mm2/m2, p=0.04)が、Fontan時の肺動脈形成術の併施に有意差は認めなかった。Fontan後カテーテル検査でもPA indexはbPAB(+)群で有意に低く(p=0.02)、肺動脈再介入も外科的で差はないが経カテーテル的でbPAB(+)群で有意に多かった(5年累積発生率: bPAB(+): 88.1% vs. (-): 54.7%, p<0.01)。【結語】当院の検討では、HLHSのハイリスク症例でのbPAB先行により、概ね良好な中長期生存率と肺血管条件を達成できた。bPAB実施例では肺動脈は小さくなる傾向があるが、カテーテル治療により対応可能と考えられた。