講演情報
[III-OR32-01]Rit1変異を有するNoonan症候群モデルマウスは、胎児期から心筋肥厚を呈する
○鈴木 大1,2 (1.東北大学 大学院医学系研究科 公衆衛生学専攻 遺伝医療学分野, 2.東北大学病院 小児科)
キーワード:
Noonan症候群、胎児期、心筋肥厚
【背景】Noonan症候群は、特異的顔貌、精神発達遅滞、先天性心疾患、リンパ管形成異常などを特徴とする、常染色体顕性遺伝または潜性遺伝の先天性奇形症候群である。細胞内シグナル伝達経路のRAS/mitogen-activated protein kinase(RAS/MAPK)経路に関連するさまざまな遺伝子の変異で発症する。2013年、当研究室でRas-like without CAAX1(RIT1)の生殖細胞系列の変異によりNoonan症候群が発症することを報告した。また、RIT1変異を有するNoonan症候群患者では心疾患の発症が多いこと、さらにRit1A57G/+変異マウスを作成し、生後12週以降での心重量/体重比の増加と、心臓の線維化の亢進を報告した。しかしながら、Rit1A57G/+変異マウスの胎児期から心疾患を発症しているかは不明である。【目的】Noonan症候群モデルであるRit1A57G/+変異マウスの胎児期の心臓形態を解析することで、Rit1A57G/+変異によるNoonan症候群発症機序を解明することを目的とした。【方法】当研究室で作成したRit1A57G/+変異雄性マウスと野生型雌性マウスを交配させ、得られた胎児の心臓表現型を解析した。【結果】胎生14.5日の胎児の心臓では、野生型と比して壁肥厚は認めず、心筋における増殖能亢進も認めなかった。しかし胎生16.5日の胎児では、Rit1A57G/変異マウスで左室と心室中隔の肥厚を認め、さらに心筋の増殖能は亢進していた。また肺動脈弁は肥厚しており、肺動脈弁狭窄症の発症を示唆した。肥厚した心筋は細胞数の増加が原因と考えられた。【結論】Rit1A57G/変異マウスでは胎生16.5日の時点で心筋肥厚を呈すること、また心筋細胞の増殖能が亢進することが明らかとなった。(会員外共同演者、阿部太紀、新堀哲也、菊池敦生、青木洋子)