講演情報
[III-OR32-04]低酸素飼育肺動脈絞扼ラットは心筋毛細血管密度を上昇させることによりミトコンドリア傷害を軽減させ心機能を維持した
○伊藤 怜司, 糸久 美紀, 浦島 崇 (東京慈恵会医科大学 小児科学講座)
キーワード:
右室不全、低酸素血症、血管新生
【背景】近年チアノーゼ性先天性心疾患(CCHD)の治療成績は向上する一方で、狭窄病変やチアノーゼの残存は心不全を遷延させ生命予後に影響を与える。主心室の多くは右室であるが、CCHDにおける右室リモデリングは未だ不明である。我々は低酸素飼育肺動脈絞扼ラットをCCHDモデルとして組織生理学的評価を行い、体血圧60%以上の右室圧上昇、心室拡張障害を同定、心筋線維化・ミトコンドリア(mt)形態異常を確認し、左室で更に悪化すると報告した。今回、本モデルの分子生物学的解析を追加したので報告する。
【目的】低酸素飼育肺動脈絞扼ラットの心機能に影響を与える因子を評価する。
【方法】SDラットを低酸素環境(13%)で飼育し4週齢時に肺動脈絞扼術(PAB)を施行する。低酸素飼育を継続し3週後に組織を摘出しミトコンドリア(mt)DNAや血管新生因子をRT-PCR法を用いて測定した。結果は大気飼育群と群間比較し解析を行なった。
【結果】対象はPABを施行した低酸素群(PBH), 大気群(PBR), 低酸素対照群(CH), 大気対照群(CR)を各群6例抽出し解析した。mtDNAは各負荷によりRVで増幅しLVでは減衰した(RV: PBH0.85±0.35, CR0.48±0.21(p<0.05) LV: PBH0.40±0.18, CR1.04±0.42(p<0.05))。血管新生因子(VEGF, Angiopoietin1)は両心室共に増幅し上流転写因子であるHIF1αも同様に増幅した。血管内皮細胞活性を反映するeNOSはLVと比較してRVで増幅(PBH1.33±0.59, CR1.01±0.45(p<0.01))した。心筋毛細血管密度はmtDNAと同様の傾向を示した (RV: PBH20.4±1.0, CR8.8±0.7(p<0.01) LV: PBH10.3±0.4, CR8.7±0.5(p=0.46))。
【結論】分子生物学的手法を用いることでmtの組織学的変化を裏付けることが出来た。心室間に認められた差異は負荷に対する冠循環の血管新生順応が影響したと示唆され、心筋エネルギー代謝の観点から追加検討することでCCHDにおける心室リモデリング機序が明らかになる可能性がある。
【目的】低酸素飼育肺動脈絞扼ラットの心機能に影響を与える因子を評価する。
【方法】SDラットを低酸素環境(13%)で飼育し4週齢時に肺動脈絞扼術(PAB)を施行する。低酸素飼育を継続し3週後に組織を摘出しミトコンドリア(mt)DNAや血管新生因子をRT-PCR法を用いて測定した。結果は大気飼育群と群間比較し解析を行なった。
【結果】対象はPABを施行した低酸素群(PBH), 大気群(PBR), 低酸素対照群(CH), 大気対照群(CR)を各群6例抽出し解析した。mtDNAは各負荷によりRVで増幅しLVでは減衰した(RV: PBH0.85±0.35, CR0.48±0.21(p<0.05) LV: PBH0.40±0.18, CR1.04±0.42(p<0.05))。血管新生因子(VEGF, Angiopoietin1)は両心室共に増幅し上流転写因子であるHIF1αも同様に増幅した。血管内皮細胞活性を反映するeNOSはLVと比較してRVで増幅(PBH1.33±0.59, CR1.01±0.45(p<0.01))した。心筋毛細血管密度はmtDNAと同様の傾向を示した (RV: PBH20.4±1.0, CR8.8±0.7(p<0.01) LV: PBH10.3±0.4, CR8.7±0.5(p=0.46))。
【結論】分子生物学的手法を用いることでmtの組織学的変化を裏付けることが出来た。心室間に認められた差異は負荷に対する冠循環の血管新生順応が影響したと示唆され、心筋エネルギー代謝の観点から追加検討することでCCHDにおける心室リモデリング機序が明らかになる可能性がある。