講演情報
[III-OR32-06]脱細胞化生体組織を用いた肺動脈形成時の補填材料に関する検討
○鍋島 惇也1, 川畑 拓也1, 橋本 良秀2, 岸田 晶夫2, 藤田 知之1 (1.東京科学大学 医歯学総合研究科 心臓血管外科, 2.東京科学大学 総合研究院 生体材料工学研究所 物質医工学分野)
キーワード:
脱細胞、肺動脈形成、動物実験
<緒言>先天性心疾患に対する段階的手術における肺動脈形成の素材として自己心膜が広く使用されているが、再手術時においてはすでに使用あるいは高度の癒着などが原因で必要量が確保できないことがある。その場合ウシ心のう膜やゴアテックスが使用されるが、自己心膜との物性の相違や石灰化、成長性の観点から有用な素材は未だない。我々はこれまで、高静水圧処理法により作製した脱細胞化生体組織が、生体組織に類似した力学特性、低免疫原性、優れた生体適合性、組織再構築能を有することを明らかにしてきた。肺動脈拡大形成においても脱細胞化生体組織が有用であると期待される。そこで、肺動脈拡大形成における脱細胞化生体組織の有用性を検証するためにブタ脱細胞化生体組織をウサギ肺動脈に異種移植する動物実験を計画した。<目的>ウサギ肺動脈におけるブタ脱細胞化心膜移植後の組織適合性及び再構築能を検証する。<方法>食用ブタ心膜を高静水圧処理法(10000気圧、10分間)により処理し脱細胞化ブタ心膜を作製した。日本白色家兎(20週齢、平均体重3.45kg)を正中開胸し、主肺動脈を部分遮断後、石灰して同部位に脱細胞化ブタ心膜を縫合移植した。閉胸し1か月(N=3)、6か月(N=6)の観察期間ののち移植組織を摘出し、肉眼的および組織学的検討を行った。<結果>すべての個体で肉眼的に内腔面は血管内皮に覆われており、血栓形成や明らかな瘤状変化は認めなかった。HE染色では、1か月群で一部類上皮細胞肉芽腫を伴いリンパ球性炎症を認めたが、6か月群では炎症反応は認めなかった。EVG染色では1か月群で弾性線維層がまばらであったが、6か月群では肺動脈中膜様の弾性線維の増生と一部中膜平滑筋細胞の再生が見られた。<考察>ウサギ肺動脈への異種異所性脱細胞化組織移植では経時的な炎症反応の鎮静化と組織再構築傾向を認めており、移植組織としての有用性が示唆された。