講演情報
[III-OR33-05]遺伝子検査結果の解釈に困ったintron領域遺伝子異常を伴うQT延長症候群1型の2症例
○安心院 千裕1, 芳本 潤1, 山田 浩介2, 清水 健司2, 眞田 和哉3, 石垣 瑞彦3, 佐藤 慶介3, 金 成海3, 満下 紀恵3, 新居 正基3, 田中 靖彦3 (1.静岡県立こども病院 不整脈内科, 2.静岡県立こども病院 遺伝染色体科, 3.静岡県立こども病院 循環器科)
キーワード:
LQT症候群、遺伝性不整脈、遺伝子検査
【背景】QT延長(LQT)は学校検診において指摘される代表的な異常所見の一つだが、無症状である場合が多く診療方針の決定に難渋する疾患である。近年、保険診療の承認により遺伝子検査の実施が容易になったが、その結果として検出された遺伝子異常の解釈が複雑で、病原性の判断に苦慮することも多い。当院では、遺伝子異常の解釈に難渋する症例について遺伝染色体科とカンファレンスを行い、診療方針の決定に役立てている。【症例】症例1は9歳男児。叔母が心室細動を契機にLQT1型の診断となり、家族のスクリーニングで遺伝子検査を受けたところ同一の遺伝子異常(KCNQ1:c.1251+1G>A)を認めたため2歳時に紹介となった。当初QT時間は正常範囲内で、9歳頃から延長傾向となったが450msecは超えず、臨床的な診断に至らず経過観察のみを継続している。遺伝染色体科の解析では、intron領域の1塩基変異だが、splicingに影響する可能性があり、likely pathogenicとなった。症例2は10歳男児。小学校入学時の学校検診にてQT延長を指摘された。外来フォロー中に2回の運動時失神を認め、臨床的にLQTSと診断しナドロールの内服を開始した。遺伝子検査の結果では、KCNQ1にバリアント(c.386+3_386+4insGTAAGTGTG)が検出された。Exon領域に近いintron領域のinsertionであったが、データベース上に報告がなく、病原性の判断が困難だった。遺伝科によりsplicingについての解析が行われたが、現時点では病原性は明らかでない(uncertain)の結果となった。現在mRNAの解析に向けて準備を進めている。【結語】LQTSの診療では、臨床情報に加え、遺伝子検査結果の正しい専門的な解釈が求められる。