講演情報
[III-OR33-06]学校心臓検診で抽出されるQT延長症候群患児に対する治療開始基準の検討
○吉永 正夫1,2, 二宮 由美子1, 田中 裕治1, 加藤 浩一3, 高橋 秀人4, 緒方 裕光5 (1.国立病院機構鹿児島医療センター小児科, 2.医療福祉センターオレンジ学園, 3.滋賀医科大学循環器内科, 4.帝京平成大学 大学院 環境情報学研究科 医学統計学ユニット, 5.女子栄養大学・女子栄養大学大学院 疫学・生物統計学研究室)
キーワード:
学校心臓検診、QT延長症候群、Bazett補正
【背景および目的】無症状QT延長症候群(LQTS)のβ遮断剤治療開始基準として三大陸不整脈学会と日本のguidelineはBazett補正QTc(QTcB)≧470 msを勧めている。学校心臓検診(心検)で抽出されたLQTS患児にこの基準が適切か検討した。【方法】対象は2005~2019年に心検で抽出され当院を受診した患児のうち、LQTS score≧3.5以上、観察期間3年以上の154例(男児76例、女児78例、診断齢10.4±3.0歳、観察期間9.2±5.3年)。受診時は原則として安静時(+MTT)とHolter心電図を記録した。安静時QT/RR間隔はV5誘導でマニュアル測定し、3心拍の平均値{QTcB値とFridericia補正値(QTcF)}を算出した。Holte心電図では1日を睡眠中、起床時、日中(午前、午後、夜間)の5時間帯に分け、各時間帯の最低、平均、最大心拍数時心電図(計15枚)のQT/RR間隔を測定した。安静時、Holte心電図ともに全記録の最大値を用いた。治療開始基準としてのcut-off値は各QTc値の症状出現の有無に対するYouden index (YI; 感度+特異度-1)の最大値とした。【結果】遺伝学的検査は107例(70%)に施行され、40例(37%)で判明した。LQTS1型(LQT1) 18例、LQT2 14例、LQT3 2例、その他6例であった。受診後のLQTS関連心症状は10例(失神10、VT/TdP 2、蘇生された心停止1、死亡1、重複有)に出現した。治療は症状出現全例を含む51例 (33%)に行われていた。YIが最大になった安静時QTcB、QTcF、Holter心電図QTcB、QTcFはそれぞれ500, 470, 580, 540 msであった。これらの値での感度はそれぞれ67%, 100%、89%、100%であった。一方、症状出現の感度が100%で、かつ最大YI値を示したQTc値はそれぞれ470, 470, 560, 540 msであった。これらの値での特異度はそれぞれ18%, 48%, 53%, 76%であった。【考察・結論】YIからみると、学校心臓検診で抽出される患児にはQTcB値では感度が低い結果であった。QTcB≧470 ms では特異度が18%と極めて低く、不要な薬物投与が増えると考えられた。