講演情報

[III-OR34-04]大動脈スイッチ手術後の上大静脈閉塞/狭窄に関する研究

中島 聡1, 永田 弾2, 村岡 衛2, 福岡 將治2, 倉岡 彩子1, 中野 俊秀3, 佐川 浩一1 (1.福岡市立こども病院 循環器科, 2.福岡市立こども病院 循環器集中治療科, 3.福岡市立こども病院 心臓血管外科)
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キーワード:

完全大血管転位症、上大静脈閉塞/狭窄、乳び胸

【背景】完全大血管転位症 (TGA: transposition of the great arteries) に対する大動脈スイッチ術 (ASO) 後における上大静脈 (SVC) 閉塞/狭窄は致死的な難治性胸水との関連が言われている。原因には術後の大血管位置の変化、中心静脈カテーテル (CVC) や末梢静脈挿入式中心静脈カテーテル (PI) の先端位置、新生児期の血栓傾向、ASOの時期など多因子に及ぶとの報告があるが、その詳細は明らかではない。今回の研究の目的はASO後のSVC閉塞/狭窄の臨床像を明らかにすることである。【対象と方法】2020年から2024年に福岡市立こども病院でASOを行ったTGA患者を対象とし、診療録から後方視的に診療情報を抽出し、SVC閉鎖/狭窄の有無で各臨床パラメータを比較検討した。【結果】対象期間中に40例のASOが行われ、そのうち3例 (7%)が術後にSVC閉塞/狭窄を起こした。SVC閉塞/狭窄の有無で2群に分けると、術前のカテコラミン使用[1 (33%) vs 15 (4%), p=1.00]、術前後の人工呼吸管理の有無 [1 (33%) vs 20 (54%), p=0.59]や期間 [29 (4-142) vs 6 (2-19)日, p=0.17]、凝固能、ASOの時期 [日齢 6 (6-11) vs 9 (0-300), p=0.33]、CVCの有無や先端位置などには有意差はなかった。一方で、SVC閉塞/狭窄をきたした群ではPI先端がSVCと無名静脈の合流部よりも深い位置に留置され [3 (100%) vs 7 (21%), p=0.017]、PICU滞在期間が長く [35 (20-142) vs 9 (5-21)日間, p=0.0049]、乳び胸の合併が多かった [3 (100%) vs 6 (16%), p=0.0085]。【まとめ】ASO後のSVC閉塞/狭窄にはPIの先端位置が影響を及ぼしている可能性が示唆された。