講演情報
[III-OR34-05]リンパ管シンチグラフィの所見に基づく術後乳糜胸の管理
○渡部 聖人1, 佐藤 慶介2, 廣瀬 圭一1, 伊藤 弘毅1, 五十嵐 仁1, 中村 悠治1, 前田 登史1, 菅藤 禎三1, 安野 優樹1, 坂本 喜三郎1 (1.静岡県立こども病院 心臓血管外科, 2.静岡県立こども病院 循環器科)
キーワード:
術後合併症、乳び胸、リンパ管シンチグラフィ
【背景】術後乳糜胸の管理においては,少数ではあるものの保存的治療の効果がなく治療に難渋する症例が存在する.当院では,術後乳糜胸診断/疑い例に対し,早期にリンパ管シンチグラフィ(Lymphatic Scintigraphy: LS)を施行し,3病型である損傷漏出(Traumatic Leak: LS)・肺内リンパ還流症候群(Pulmonary Lymphatic Perfusion Syndrome: PLPS)・中枢リンパ流障害(Central Lymphatic Flow Disorder: CLFD)を鑑別したうえで治療管理の方針を検討している.【目的】LSによる病型把握に基づく管理が,術後乳糜胸の予後にもたらす影響を検討すること.【対象と方法】2019年1月から2025年1月までの間に術後乳糜胸診断/疑い例に対しLSを施行した21手術20名を対象とした.なお,単心室治療群(S群)15手術14名,2心室治療群(B群)6手術6名であった.乳糜胸病型・治療法・予後などについて診療録より後方視的に検討した.【結果】乳糜胸の病型はTL2例(S群1例/B群1例),PLPS 14例(S群10例/B群4例),CLFD3例(S群2例/B群1例),乳糜胸否定1例(S群)であった.このうち,TL1例(B群1例),PLPS 11例(S群8例/B群3例),CLFD1例(B群1例)については保存的治療を継続し,TL/PLPS例は改善し,CLFD例は死亡した.体肺側副血行路塞栓を行った症例はPLPS1例(S群),CLFD1例(S群)であり,PLPS例は改善し,CLFD例は死亡した.胸管塞栓/破砕を行った症例はTL1例(S群),PLPS2例(S群1例/B群1例),CLFD1例(S群)であり,TL/PLPS例は改善し,CLFD例は死亡した.胸管結紮をCLFD1例(S群)に対して行ったが死亡した.【結論】LSを用いて乳糜胸の3病型を鑑別することで,試行錯誤の状態ではあるものの病型と病勢に応じた治療計画が可能である.TLとPLPSについては適切な時期に胸管塞栓の判断をすることで予後の改善が期待される一方で,CLFDについては新たな治療アプローチが求められる.