講演情報
[III-OR34-06]当院におけるModified del Nido心筋保護液の使用経験
○岡田 翼, 久保 沙羅, 東田 昭彦, 松島 峻介, 岩城 隆馬, 松久 弘典 (兵庫県立こども病院)
キーワード:
Modified del Nido、Blood CP、VSD
【背景】del Nido心筋保護液は、1990年代に小児用心筋保護液として開発され、現在では北米で最も広く使用されている。その最大の特徴は、単回投与で90分以上の心停止を維持できる点であり、他の心筋保護液と比較して遜色のない心筋保護効果が認められている。しかし、基本製剤であるPlasmalyte Aが日本で市販されていないため、本邦での使用は限定的であった。近年、生理食塩水をベースに作成されたmodified del Nido心筋保護液(MdN液)が開発され、臨床及び動物実験において有効性と安全性が報告されている。当院でも2024年11月よりMdN液を臨床導入しており、その使用経験を報告する。【方法】2024年11月から2025年1月にMdN液を使用した38例と、導入直前の2024年7月から11月までの従来のBlood CP(BCP液)を使用した43例を比較し、MdNの安全性及び有効性を検討した。また、MdN液の心筋保護効果に着目し、VSD症例のみを抽出(MdN液10例、BCP群10例)し比較を行った。【結果】MdN群及びBCP群の手術時月齢(中央値)9(0-144) vs 10(0-374) (p=0.58), 体重6.7kg(2.4-45)vs 6.3kg (2.8-55)(p=0.89)であった。 手術時間は331分(159-650分)vs 347分(182-632分) (p=0.79), 大動脈遮断時間は79分(10-255分)vs 73分(15-325分) (p=0.88)であった.。大動脈遮断解除にDCを要した症例はなかった。 術後トロポニンIの最大値は13(3.0-84) vs 12(2.9-41)(p=0.50)であった。またVSD症例においてMdN液群及びBCP群の手術時間は237分(195-314分) vs 226分(200-309分)(p=1.0), 大動脈遮断時間は68分(52-109分)vs 61分(45-79分)(p=0.33), 術後トロポニンIの最大値は13(3.0-42) vs 9.4(7.2-41)(p=0.48)であった. 【結論】 MdNは従来当院で使用していたBCPと比較し同等の心筋保護効果を持ち、安全に使用可能であった。90分間の単回投与でもトロポニンI の優位な上昇を認めず,有効な心筋保護効果が得られていると思われる