講演情報

[III-P01-2-01]小児血液腫瘍性疾患に合併する肺高血圧症を考える

永井 礼子, 寺下 友佳代, 板橋 立紀, 鈴木 祐人, 佐々木 大輔, 平林 真介, 山澤 弘州, 武田 充人, 長 祐子, 真部 淳 (北海道大学病院 小児科)
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キーワード:

肺高血圧症、血液腫瘍性疾患、造血幹細胞移植

【背景】小児血液腫瘍性疾患の患者に、肺高血圧症が合併することがあるが、そのメカニズムは十分には明らかになっていない。【方法】北海道大学病院小児科において、2014年1月から2024年12月の間に造血幹細胞移植または化学療法を受けた15歳未満の患者について、肺高血圧症の合併の有無と経過について検討した。【結果】造血幹細胞移植を受けた小児患者66症例と、化学療法のみを受けた小児患者193症例、計259症例のうち、4症例(1.5%)で肺高血圧症の合併が確認された。肺高血圧症の成因は肺動脈性肺高血圧症、肺静脈閉塞症の疑い、慢性血栓塞栓性肺高血圧症の疑いなど多彩であった。4症例全例でシクロフォスファミド、3症例でブスルファンの使用歴が認められた。4症例中3症例では原疾患の治療直後に肺高血圧症を発症し、肺血管拡張薬の内服、酸素吸入などが必要となった。そのうち2症例では1年以内に肺高血圧症への加療を中止することが可能であった。4症例中1症例では造血幹細胞移植直後には肺高血圧症を認めていなかったが、移植から10年後に、胸痛・喀血を契機として肺動脈性肺高血圧症の発症が確認され、長期の肺血管拡張薬の内服を余儀なくされている。4症例中2症例は原疾患の悪化により死亡した。【結語】小児血液腫瘍性疾患の患者においては、原疾患の治療中や治療直後はもちろんのこと、遠隔期にも肺高血圧症を発症する可能性について留意し、定期的にその有無を確認していく必要がある。また、発症しうる肺高血圧症の成因は多彩であり、原疾患の経過や薬剤使用歴を確認した上で、個別に適切な評価・管理を行っていくことが重要である。