講演情報

[III-P01-2-04]Treat and repairによって段階的な閉鎖を行った肺高血圧を伴う心房中隔欠損症の一例-あなたは肺血管拡張薬やめますか

真船 亮1, 星野 健司1, 中村 祐輔1, 築野 一馬1, 大森 紹玄1, 増田 詩央1, 百木 恒太1, 河内 貞貴1, 野村 耕司2 (1.埼玉県立小児医療センター 循環器科, 2.埼玉県立小児医療センター 心臓血管外科)
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キーワード:

心房中隔欠損症、肺高血圧、treat and repair

肺高血圧(PH)を伴う心房中隔欠損症(ASD)は、肺血管抵抗(Rp)と肺体血流比を元に治療戦略をたてる。成人ではRp 3 U単位・m2以上、肺体血流比が高くない症例は、肺血管拡張薬を導入してPHの改善を経てから治療する(Treat and Repair)が有効と報告されている。今回、treat and repairを計画的に施行し、段階的にASDを閉鎖した症例を経験したので報告する。症例は13歳女性。在胎35週、体重880gで出生し、他院NICUの入院歴がある。7歳時に学校心臓健診を契機にASD(二次孔型)と診断し、体重増加を待って経皮的心房中隔欠損閉鎖術の方針であった。12歳時の心エコーでPHが疑われ、心臓カテーテル検査を行った。平均中心静脈圧8 mmHg、平均肺動脈圧 62 mmHg、肺動脈楔入圧 7 mmHg、Rp 8.75 U単位・m2、Qp/Qs 1.15であった。Treat and Repairの方針とし、アンブリセンタンを導入後にRp 3.79 U単位・m2、Qp/Qs 1.93とRpの改善を確認した。経食道心エコーの所見から外科的にASD閉鎖の方針とし、13歳時に自己心膜を用いてASD部分閉鎖を行った。この際に施行した肺生検では、HE分類3度、内膜の線維性肥厚の進行がみられた。15歳時の心臓カテーテル検査で平均肺動脈圧34 mmHg、Rp 4.2 U単位・m2、Qp/Qs 1.1であった。バルーン閉鎖試験を行いASDは閉鎖可能と判断し、ASO 11 mmで閉鎖した。閉鎖後も軽度のPHが残存していたが、20歳で肺血管拡張薬を中止。その後もPHの増悪はみられてはいない。Treat and Repairでの段階的な閉鎖は有効な戦略と考えられた。PH残存例は肺血管拡張薬の継続が望ましいとされるが、本症例では肺血管拡張薬の有無によってPHの程度は変わらなかった。