講演情報
[III-P01-2-07]右肺無形成に伴う肺高血圧症に対してCa拮抗薬が有効であった一例
○今西 梨菜, 岡 秀治, 中右 弘一, 長屋 建, 高橋 悟 (旭川医科大学 小児科)
キーワード:
肺無形成、肺高血圧、Ca拮抗薬
【背景】片側性肺無形成は妊娠1/15000件と推定される稀な疾患で、成人期までの長期生存率は左肺欠損症で約50%、右肺欠損症で約30%と予後不良である。肺無形成患者の約20%に肺高血圧症を合併し、治療は難渋する。我々は右肺無形成に伴う肺高血圧症に対してCa拮抗薬が有効であった症例を経験したため報告する。【症例】2歳女児。胎児期に右肺無形成を指摘、切迫早産のため在胎35週3日、体重1310gで出生。生後に右肺無形成、心房中隔欠損、左上大静脈遺残と診断した。生後まもなく呼吸不全のため挿管・人工呼吸管理を開始し、著明なチアノーゼ発作を反復した。筋弛緩薬併用の鎮静管理を長期に要し、生後6か月で気管切開術を施行。肺高血圧を合併し、肺血管拡張薬としてMacitentan、Riociguat、Selexipagの導入・増量を進めた。1歳4か月で経静脈鎮静を離脱したが一酸化窒素(Nitric Oxide; 以下、NO)離脱困難が続き、NICU長期入院を要した。1歳10か月のカテーテル評価時、NO 1ppm投与下で肺動脈圧66/23(44)mmHg、肺体血圧比0.80、肺血管抵抗5.6Um2だったが、NO中止で肺動脈圧108/72(86)mmHg、肺体血圧比1.26、肺血管抵抗16.6Um2へ増悪。Ca拮抗薬負荷試験により肺動脈圧低下を確認でき、Nicardipine 0.4mg/kg/dayを開始した。4mg/kg/dayまで増量後にNO離脱し、2歳8か月の再評価時にはNO中止下で肺動脈圧78/30(54)mmHg、肺体血圧比0.73、肺血管抵抗5.6Um2と改善を認めた。【考察】Ca拮抗薬は一部の小児肺動脈性肺高血圧患者に有効と知られるが本邦の小児における使用報告は乏しい。本症例のようにNO吸入に依存する症例では肺血管の攣縮が病態に関与していると推測され、Ca拮抗薬を試す価値があると考える。