講演情報

[III-P01-3-01]感染性心内膜炎を契機に診断された成人期大動脈縮窄症の一例

菅野 幹雄, 瀧 亮佑, 松本 遼太, 山本 正樹, 北市 隆, 秦 広樹 (徳島大学大学院医歯薬学研究部 心臓血管外科学分野)
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キーワード:

大動脈縮窄症、感染性心内膜炎、心室中隔欠損症

56歳男性.幼少期に心室中隔欠損症(VSD)を指摘されていたが成人期まで無治療で経過観察されてきた.高熱が遷延するため医療機関を受診.心雑音及び心エコーにてVSD辺縁に付着する約1cm大の疣贅を認め感染性心内膜炎と診断された.血液培養にてStreptococcus mitisを同定.アンピシリンを中心とした抗生剤治療を約4週間施行し軽快退院した.心室中隔欠損閉鎖術の術前検査として施行した造影CT検査にて,左鎖骨下末梢での大動脈の高度狭窄及び著明に発達した側副血管を認め,大動脈縮窄症と診断した.またABI検査では左右ともに約0.5程度まで低下していた.頭痛や胸痛,下肢痛などの自覚症状はなかったが,収縮期血圧180-200mmHg程度の上半身高血圧や左室肥大も認めたことから,大動脈縮窄に対する手術介入も行うこととした.
手術は胸骨正中切開下,人工心肺下,心停止下に施行.側副血管は可及的に結紮・離断した.下行大動脈の遮断部位が確保できないため超低体温循環停止にて末梢吻合を施行.径20mmのDacronグラフトを間置して大動脈弓の再建を行った.VSDに対しては経三尖弁的に確認したが辺縁に疣贅の付着はなく感染は治癒していた.VSD径は小さく直接閉鎖を行った.第8病日に人工呼吸器より離脱.以後の経過は比較的良好であった.
術後7ヶ月時のABI検査では右:1.07、左:1.09と正常化していた.また上半身血圧は110-114mmHg程度であった.
大動脈縮窄/離断症は通常新生時期早期の治療介入が必須であり,未治療の場合は動脈管性ショックのため救命困難となる.一方で本症例の様に著明に発達した側副血管のため循環破綻を免れ成人期に偶発的に発見される例も稀に認める.高血圧以外に明確な症状がない場合がある一方で,縮窄部の瘤化や解離を来すこともあり注意を要する.治療抵抗性の高血圧がある場合,成人期であっても先天性の病変を併存していることを念頭に治療を進めることが重要であると思われた.