講演情報
[III-P01-3-02]70歳で心房中隔欠損症の閉鎖栓治療を行った重症Ebstein奇形の一例
○麻生 健太郎1, 奥野 泰史2, 田邊 康弘2 (1.聖マリアンナ医科大学 小児科, 2.聖マリアンナ医科大学 循環器内科)
キーワード:
成人先天性心疾患、Ebstein奇形、カテーテル治療
【緒言】Ebstein奇形(EA)の臨床経過は多様である。我々は、重症のEAと診断されながら外科的治療を一切受けずに経過し、70歳で心房中隔欠損症(ASD II)に対する閉鎖栓治療を施行した症例を経験した。本症例は、EAの自然歴や治療についての再考に貴重な症例と考えられるため報告する。【症例】70歳男性。40歳時に心雑音を指摘され、精査の結果EAと診断されたが定期フォローは行われなかった。47歳より動悸や易疲労を自覚し受診、成人先天性心疾患専門外来でフォローが開始された。手術を複数回提案されたが拒否された。56歳時にASDの閉鎖試験を実施したが、血圧が低下したため閉鎖を断念。67歳時に交通事故で脳出血を発症し、片麻痺を残したことで前医への通院が困難となり、68歳時に当院紹介。初診時のSpO2は89%で、チアノーゼとばち指を認めた。胸部X線では心胸郭比73%、心エコーでは三尖弁中隔尖および後尖の下方偏位と重度のTRを認めた。過去の心臓MRI検査から算定されたCelermajer Indexは1.46であり、重症度はGrade 3に相当した。フォロー中にチアノーゼと易疲労が進行し、ASD閉鎖栓治療を提案した。【治療】全身麻酔下でカテーテル治療を施行。術前のSpO2は91%。血行動態評価ではRA(10)、LA(10)、PV wedge 15/10(12)、LV 101/EDP 10、Ao 104/68(85)。ASD径は透視で14mm、経食道心エコーで11mmと測定され、Amplatzer septal occluder 14mmを用いて閉鎖。閉鎖後のSpO2は98%、RA圧は13mmHgに上昇したが、チアノーゼ、易疲労は改善した。【考察】高齢者の重症EA症例で外科治療やカテーテル治療が施行された報告は少ない。本症例ではカテーテル治療でASD閉鎖が行われ、治療後にチアノーゼおよび易疲労が改善した。術後のフォロー期間が短いため長期的な効果には言及できないが、高齢者EA症例でもASD対するカテーテル治療は考慮されるべき治療と思われた。