講演情報

[III-P01-3-03]ステロイド依存性ARDSを反復したTCPC術後遠隔期症例

永松 優一1, 石井 卓1, 古川 晋1, 長原 慧1, 山口 洋平1, 細川 奨1,2 (1.東京科学大学病院, 2.武蔵野赤十字病院)
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キーワード:

failed Fontan、ARDS、ステロイド

【背景】 Fontan型手術後遠隔期の呼吸器合併症の報告には肺動静脈瘻、鋳型気管支炎などが多いが、ARDSを反復した症例の報告はない。 【症例】 15歳女子。出生後に完全型房室中隔欠損症と診断され、左側房室弁口が狭小であり、二心室修復不可能と判断された。肺動脈絞扼術、両方向性Glenn手術を経て、2歳時にTCPC手術が施行された。以後、良好なFontan循環を維持していたが、14歳10か月頃より、軽度SpO2 低下(90%前後)とPACの増加を認めていた。15歳2か月時に呼吸苦の訴えがあり医療機関を受診したところ、SpO2の著明な低下(56% 室内気)と胸部単純X線での両側びまん性浸潤影を認めた。前医に転院搬送・緊急入院となり、入院同日からメチルプレドニゾロン60 mg/dayの投与が開始された。入院後、酸素化、X線画像は改善を認め、入院6日目に当院へ転院した。入院翌日にステロイドを終了したところ、同日夜間に呼吸症状と浸潤影の増悪を認めた。ステロイドを再開したところ速やかに改善したが、その後もステロイド減量に伴う呼吸器症状およびX線所見(びまん性浸潤影)の増悪を3回反復した。入院後の心臓カテーテル検査では、心収縮は保たれていたが、左室拡張末期圧・肺動脈楔入圧の上昇(14 mmHg)、肺動脈圧の上昇(16 mmHg)を認めた。また、体肺動脈側副血行路と軽度の静脈シャントを認めた。検査後より、それまで内服していたACE阻害薬のARN阻害薬への変更、βブロッカーの増量、SGLT2阻害薬の追加、体肺動脈側副血行路への塞栓術を行った。心不全治療の強化を行いつつステロイドは時間をかけて減量(外来で2~3週ごとに減量)する方針とし、治療開始後7ヶ月時点でステロイドはプレドニン6 mgまで減量できている。経過中、 再燃時に採取した血清のサイトカインプロファイル検査ではIL-6上昇を認めた。【考察】本症例ではFontan循環に起因するIL-6の上昇がステロイド依存性ARDSの病態に関与していると推察された。