講演情報
[III-P01-3-04]PLE発症19年で、悪性リンパ腫が診断された三尖弁閉鎖の1例
○渡辺 まみ江, 宗内 淳, 杉谷 雄一郎, 清水 大輔, 豊村 大介, 峰松 伸弥, 池田 正樹, 田中 惇史, 峰松 優季 (JCHO九州病院 循環器小児科)
キーワード:
Fontan、蛋白漏出性胃腸症、悪性リンパ腫
【はじめに】蛋白漏出性胃腸症(PLE)を発症したFontan患者の厳しい予後は知られるが、今回PLE発症19年で悪性リンパ腫が診断された症例を経験した.【症例】三尖弁閉鎖症の44才女性、2回の肺動脈絞扼術を経て、8才でFontan(Bjork)に到達、19才でTCPC conversionを行い、25才でPLEを発症した. 37才ころから、胸水コントロール困難、強化した治療にも抵抗性で入院を繰り返した. 本人主体で運動・食事や利尿剤投薬時間の工夫など、厳格なセルフコントロールを試み、TP/Alb 3.8/1.8 g/dl前後のまま、約5年間入院を回避、自宅で暮らし、フルタイムワークも継続された.42才ころより再度胸水増加、43才で疼痛を伴う急激な大腿腫脹と発熱を繰り返し、リンパ浮腫による急性炎症性変化と判断した.専門スタッフの協力のもと、皮膚保護や圧迫療法で再発を回避できた. 44才ころより、緩和的な腹水ドレナージの機会が増えていった.ウオーキングや食事療法は驚異的な胆力で継続され、外来診療を続けたが、腹水の白血球・LDHの増加を契機に、腹水細胞診から悪性リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の診断に至った.大量胸腹水を伴うFailing Fontanであり、化学療法や必要なhydrationのへ忍容性も懸念されたが、本人は治療に前向きで、標準治療であるR-CHOP療法を改変して化学療法を開始した.4クール治療後の胸水細胞診から治療への反応は不良と判断、薬剤を変更して化学療法は継続中だが、現在まで致死的な有害事象はない. 病室環境を改善し、入院中も1日5000歩程度のウオーキングを再開、在宅医療も整えて退院に至った.集約的治療のもとではあるが、PLE治療に難渋してきたこの数年で、本人の状態は最も安定している.【結語】長期は不定ながら、リンパ腫の治療介入により状態の改善を確認できた.本人の強靱な精神力が要だが、加えて複雑な経過には循環器科だけでは気づけない事象も多く、他科との協働診療が不可欠だった.