講演情報
[III-P01-3-05]フォンタン術後成人患者における血液検査と中心静脈圧との関係
○古河 賢太郎, 伊藤 怜司, 野竹 慎之介, 橘高 恵美, 馬場 俊輔 (東京慈恵会医科大学 小児科)
キーワード:
フォンタン、術後遠隔期、CVP
【背景】フォンタン術後遠隔期において、中心静脈圧(CVP)の上昇が原因となり、肝機能障害や蛋白漏出性胃腸症などの臓器障害を引き起こす。またフォンタン循環不全には高CVP状態が関係する。フォンタン循環におけるCVPの評価は重要であり、フォンタン術後遠隔期成人患者における血液検査値とCVP値との関係についての報告は限られている。【方法】直近10年間に当科で心臓カテーテル定期検査を施行した18歳以上のフォンタン術後遠隔期患者を対象とした。RDW(赤血球分布幅)、Lym(リンパ球数)、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)などの各種血液検査値とCVP値との関連を診療録から後方視的に検討した。【結果】対象は28例(男16例)で、カテーテル検査時の年齢は27.0 ± 8.9歳であった (mean±SD、以下同)。右室型単心室が14例、左室型単心室が9例であった。フォンタン術後21.6 ± 6.2年で、全例が術後15年以上経過していた。RDW-CV 14.1 ± 2.2 %、Lym 1058 ± 462 /μl、BNP 35.2 ± 39.6 pg/ml、CVP 11.3 ± 3.6 mmHg、ScvO2 66.2 ± 7.66 %、CO 4.76 ± 1.40 l/min、Rp 1.24 ± 0.73 Wood unitsだった。CVPはRDW-CVと有意な正の相関を示し(p= 0.02)、Lymとは有意な負の相関関係を示した(p= 0.02)。一方で、CVPとBNPとの間には有意な相関を認めなかった(p= 0.54)。【結語】フォンタン循環においては心臓への前負荷がかかりにくい状態であるため、BNPでは精度に限界がある事が示唆された。一方でフォンタン術後の遠隔期において、RDW-CVとLymはCVPと相関する可能性があり、これらの血球成分は遠隔期のフォンタン循環における心不全の簡便かつ有用なバイオマーカーとなる可能性がある。