講演情報

[III-P01-3-07]TGA Senning手術後の成人症例に術後遠隔期に重症肺高血圧を合併した1例

津田 恵太郎1,2, 家村 素史1, 須田 憲治2 (1.聖マリア病院, 2.久留米大学病院 小児科)
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キーワード:

完全大血管転位、Senning手術後、肺高血圧症

【背景】complete TGAは現在Jatene手術が多くSenning術後患者を経験する機会が少なくなった。今回、Senning術後のACHD患者の術後遠隔期に重症肺高血圧の合併を来たし管理に苦慮した症例を経験したため報告する。【症例】41歳の女性。TGA1型の診断で6か月時にSenning手術, VSD閉鎖を施行。術後1年半のカテでPHや術後狭窄、リークはなし。small VSDの残存を認めた。以降は定期フォローでACE-Iや利尿剤にて40歳までの間、自立生活で介護職に従事可能なADLだった。41歳時のエコーで右心系拡大、EF56%、機能的MR3度、機能的TR1度(TRPG 41mmHg)であったが自覚症状に乏しかった。7ヶ月後(42歳時)に労作時の息切れを自覚し、TR1度だったがTRPG 83mmHgと上昇を認め検査カテを施行。mean PAP 84mmHg, Rp 22.5uits*m2。LA mean 40mmHg、機能的LVEDV 18mmHgと上昇あり。心機能の低下傾向と既知の機能的MRがPHの進行に寄与した可能性を考えた。弁手術も検討したが重症PHと心不全への薬剤介入の強化を先行した。カテ3ヶ月後に心不全増悪で入院管理を行い、その際に特発性好酸球増多症を併発しmPSLパルスを行った。一過性に軽快したが、ステロイド依存状態が持続。また、転倒による頚椎損傷の入院などでADLが低下し、カテ8ヶ月に心不全による呼吸苦で再入院した。十分な循環作動薬を使用しても、原疾患のコントロールがつかず死亡に至った。【考察】後方視的に僧帽弁への手術介入時期に余地があった可能性がある。約半年でPHが急激に進行した。症状が乏しくてもカテ含めた早期介入が妥当だった可能性がある。Senning術後半数にPH合併の報告もあり、病態把握にエコーが重要でMRとTRが一見増悪していなくても、定量評価としてTRPGやPRPGを積極的に記録しておく必要がある。Senning患者が少ない時代でもあり他職種への情報共有や教育も必要と考えられた。【結語】Senning手術後の肺高血圧症の評価にエコーでの定量評価は不可欠である。