講演情報

[III-P01-3-09]心房内血流転換術を施行された完全大血管転位1型症例のまとめ

岡崎 新太郎, 西田 公一 (福井循環器病院 小児科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

完全大血管転位、致死的不整脈、心房内血流転換術

【背景】1970年代、完全大血管転位(TGA)の標準治療はMustard手術、Senning手術による心房内血流転換術であった。1980年代後半から1990年代前半にかけて大動脈スイッチ手術が普及し1990年代にはTGA治療の第一選択となった。当院における心房内血流転換術の長期成績を検討する。【対象】1972年から1985年に当院で心房内血流転換術を施行したTGA1型14例を対象とした。【結果】対象は男性7例、女性7例。手術時年齢の中央値は18か月(5~28か月)で13例が術前に心房中隔裂開術を施行されていた(1例はカルテなし)。1970年代はMustard手術、1980年代はSenning手術が施行された。死亡は6例(周術期5例、晩期1例)で、周術期死亡例は全例剖検が行われていた。生存8例のうち4例は術後12~35年で転院または受診が途絶え追跡不能であった(Senning術後3例、Mustard術後1例)。現在も当院でフォロー中の4例は全例Mustard術後で、術後46~50年が経過していた。【長期生存例の詳細】症例1(48歳男性): 結婚し自立、会社経営。NYHA2。46歳時に持続性心房頻拍から心室細動を発症。蘇生に成功し後遺症なく回復、植え込み型除細動器(ICD)植込み。症例2(49歳女性): 未婚。就労あり。NYHA2。術後より上室頻拍を繰り返し、6歳時に洞機能不全のためペースメーカー(PM)植込み。症例3(52歳女性): 結婚・出産あり。就労あり。NYHA2。30歳頃より上室頻拍を認め抗不整脈薬治療を継続中。症例4(51歳男性): 未婚。未就労。NYHA3。40歳頃より右心不全による頻回の入院を要している。不整脈の治療歴なし。【考察】心房内血流転換術は当時のTGA治療の標準術式であったが周術期死亡率は依然として高かった。一方で周術期を乗り越えた症例の多くは長期生存しており、当院フォロー継続中の4例は50歳前後に達していた。ICDやPM植込みを要する症例が認められ、術後の長期管理において不整脈の早期発見と適切な治療介入が重要と考えられた。