講演情報

[III-P01-3-10]当院での体心室右室を有する成人先天性心疾患に対するアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬の有効性・安全性に関する後方視的研究

井手 恵太1, 弓田 悠介1, 児玉 浩幸1, 木島 康文1, 高砂 聡志1, 丹羽 公一郎1, 椎名 由美1, 大出 幸子2, 青木 二郎1 (1.聖路加国際病院 心血管センター, 2.聖路加国際大学大学院 公衆衛生学研究科)
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キーワード:

成人先天性心疾患、体心室右室、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬

【背景】内科的・外科的治療の進歩により, 先天性心疾患の約9割が成人期に達し平均寿命が飛躍的に改善したが, 心不全は未だ主たる遠隔期合併症・死因である. 後天性心疾患, 特に左室駆出率の低下した心不全においてアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)は, 著明な予後改善効果を有する. 一方, 体循環の後負荷にさらされる体心室右室(SRV)を有する先天性心疾患の心不全治療に関しては, 希少疾患のため大規模臨床試験が少なく, 薬剤の有効性・安全性は明らかでない.【目的】SRVを有する成人先天性心疾患(ACHD)患者に対するARNIの有効性・安全性を明らかにする. 【方法】2020年1月-2024年10月の間, 当院通院中のACHD患者のうちARNI内服中患者を対象とし, 投与前・投与後(直近の外来時点)の各種データを収集し後方視的に検討した.【結果】対象はARNI内服群10名, 非内服群25名であった. 対象疾患は大血管転位症・修正大血管転位症・両大血管右室起始症の3疾患であった. ARNI内服群は高齢(48.0歳vs 34.0歳, p=0.001)男性(p=0.01)が多く右室収縮能(Echo RVFAC:22.9% vs 32.5%, p=0.009)が低下していた. 追跡前後で内服群において三尖弁逆流は非増悪傾向が観察され, NT-proBNP変化(-141.42pg/ml vs 110.72pg/ml, p<0.001), Echo RVFAC変化(2.40% vs -4.2%, p=0.009)に有意差を認めた. また, ARNI投与量とNT-proBNP変化(p=0.006, 相関係数ρ=-0.711)・Echo RVFAC変化(p=0.008, ρ=0.510)との相関性が示された. フォロー期間中に明らかな有害事象は発生しなかった. 【結語】SRVを有するACHDにおいて, ARNIは心機能維持に対する有効性・安全性を示した.