講演情報

[III-P01-4-01]巨大右室憩室を伴う右室低形成,三尖弁狭窄,肺動脈弁狭窄,心房中隔欠損の幼児例

前澤 身江子1, 柏木 孝介1, 宮田 豊寿1, 赤澤 祐介2,3, 千阪 俊行1, 太田 雅明1, 坂本 裕司4, 鎌田 真弓4, 打田 俊司2,4, 檜垣 高史1,2,5 (1.愛媛大学大学院医学系研究科 小児科学講座, 2.愛媛大学医学部附属病院 移行期・成人先天性心疾患センター, 3.愛媛大学大学院医学系研究科 循環器・呼吸器・腎高血圧内科学講座, 4.愛媛大学大学院医学系研究科 心臓血管・呼吸器外科学講座, 5.愛媛大学大学院医学系研究科 地域小児・周産期学講座)
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キーワード:

心室憩室、右室低形成、三尖弁狭窄

【背景】右室憩室は稀であり,合併する心疾患の手術に際し憩室の扱いが問題となる.巨大右室憩室を伴う三尖弁狭窄,肺動脈弁狭窄,右室低形成,心房中隔欠損症に対し二心室修復を選択した幼児例について治療経過を報告する.【症例】3歳女児.胎児診断で右室低形成,肺動脈狭窄を指摘され,生後に上記と診断した.低酸素血症のため日齢30に体肺動脈短絡術(BTS)を行い退院した.2歳7ヶ月時にカテーテル検査を行いBTSと心房中隔欠損(ASD)をバルーンで同時に閉塞し,二心室循環が成立するかを評価した.閉塞前後で右房圧9mmHg、血圧変化はなく、SpO2は90%から96%に上昇した.肺動脈弁輪径は8.3mm(67%ofN),三尖弁輪径は15.1mm(70%ofN),右室拡張末期容量は12.7ml(38%ofN)だが,憩室を含めた右室容量は36.8ml(109%ofN)であった.右室と憩室は2ヶ所で交通し,圧較差は4mmHgであった.真の右室よりも憩室の容量が大きく,右室の駆出に大きく関与しており切除は困難であるが,憩室を含めた二心室循環が成立すると考え,BTS離断・ASD部分閉鎖を行なった.術後の右房圧は10mmHg,SpO2 96-97%に上昇した.【考察】右室低形成に対する外科治療は,個々の症例の形態的な特徴に従って術式が選択される。本症例は、三尖弁、肺動脈弁は狭小であるが,憩室を含めた右室容量が保たれており,二心室修復を目指す方針とした.全身麻酔下の検査では心房圧の上昇は認めなかったが,覚醒時の心房圧の評価や長期的な憩室の収縮能の評価が必要と判断し,BTS離断・ASD部分閉鎖を選択した.憩室を温存する際の問題点として憩室心筋の繊維化,収縮拡張時相のずれ,心不全,不整脈,血栓症などが指摘されている.術後1年の経過は良好であり,今後心房圧の上昇がなければASD閉鎖を検討する.