講演情報

[III-P01-4-04]消化管出血を契機に肝外門脈閉塞症と診断した三尖弁閉鎖症の一例

浅見 雄司1, 佐々木 祐登1, 稲田 雅弘1, 中島 公子1, 池田 健太郎1, 下山 伸哉1, 畑岡 努2, 松永 慶廉2, 岡村 達2, 山口 岳史3, 西 明3 (1.群馬県立小児医療センター 循環器科, 2.群馬県立小児医療センター 心臓血管外科, 3.群馬県立小児医療センター 外科)
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キーワード:

肝外門脈閉塞症、消化管出血、三尖弁閉鎖症

【背景】肝外門脈閉塞症は肝門部を含む肝外門脈閉塞により門脈圧が亢進する疾患で、静脈瘤の発達により消化管出血を引き起こす。今回我々は、三尖弁閉鎖症の治療中に消化管出血を来し、肝外門脈閉塞症と診断し治療に難渋した一例を経験したので報告する。【症例】三尖弁閉鎖症2cの胎児診断がついており、在胎38週5日、2480gで出生した男児。生後1か月で主肺動脈絞扼術を施行したが右肺動脈狭窄が進行し、生後4か月で DKS+BTシャント+肺動脈形成術を施行した。生後6か月で大量の上部・下部消化管出血を認め、造影CTで肝外門脈閉塞、食道・胃・直腸静脈瘤の発達を認めた。食道静脈瘤に対して内視鏡的静脈瘤結紮術を4回施行した後、アルゴンプラズマ凝固法による地固め療法を行った。現在1歳4か月。食道静脈瘤はコントロールされ消化管出血も落ち着いているが、胃・直腸静脈瘤は残存している。M2BPGiが既に上昇しており肝線維化が示唆される。内視鏡では門脈圧亢進による胃炎が持続し、経腸栄養増量で容易に下痢をきたすことから腸管の鬱血も示唆され、体重5.0kgで体重増加も不良である。周術期に大量の消化管出血を起こせば救命困難になる可能性が高いこと、フォンタン循環によるCVP上昇は肝硬変の進行を早め、静脈瘤発達、消化管出血のリスクをさらに高めることも考慮し、グレン手術は見送る方針とした。【考察】肝外門脈閉塞症を合併した先天性心疾患の報告は少ないが、CVP高値の症例では側副血管の発達が不良で消化管出血のリスクが高いとされ、静脈瘤破裂により死亡した報告もある。本症例のように単心室修復を目指す場合には、肝硬変の進行により消化管出血のリスクはさらに高まると考えられる。他科と連携し、様々なリスクを考慮しながら治療を進めることが重要であった。