講演情報
[III-P01-4-05]dyssynchronyを伴う重症心不全に対して心臓再同期療法が奏効した右室型単心室の1例
○辻沢 かおり1, 土居 秀基1, 坂口 平馬2, 河島 裕樹1, 西木 拓己1, 小澤 由衣1, 水野 雄太1, 榊 真一郎1, 白神 一博1, 益田 瞳1, 犬塚 亮1 (1.東京大学医学部附属病院小児科, 2.国立循環器病研究センター小児循環器科)
キーワード:
心臓再同期療法、単心室、心不全
【背景】機能的単心室に対する心臓再同期療法(CRT)の適応や有効性は確立されていない。今回CRT pacing studyで適応の判断を行った後にCRT植込み術を行い、良好な経過をたどった右室型単心室の一例を経験したので報告する。【症例】1歳3ヶ月女児。診断は僧帽弁閉鎖、左心低形成、両大血管右室起始、大動脈弁下狭窄、大動脈縮窄症。日齢4で両側肺動脈絞扼術、生後3ヶ月でNorwood術、RV-PA shunt 術を施行した。生後5ヶ月頃からBNP上昇と心機能低下を認め、生後6ヶ月にBDG、PA plasty、RV-PA conduit離断術を施行した。なおBDG前は電気的非同期を認めたが機械的非同期は認めなかった。BDG後、抗心不全治療を継続したが心機能低下が持続した。生後11ヶ月、心不全急性増悪によりカテコラミン依存状態となった。スペックルトラッキングでRV-LVおよびRV apex-RVOTの機械的非同期が進行していると考えられた。CRT pacing studyとしてRV apexと肺動脈弁直下のRVOTに心室リードを留置してAsBiVpを行い、心室圧およびpeak+dP/dtの上昇と血圧の上昇を確認、CRTは有効であると判断した。なお同時に行った肺動脈造影で左肺動脈途絶とAPC増生を認め経皮的バルーン拡張術とコイル塞栓術を施行した。左肺動脈狭窄とAPC治療後もdyssynchronyは改善せずカテコラミン依存の状態であった。1歳時にCRT植込み術を施行した。術後、dyssynchronyは改善、カテコラミン離脱可能となり術後2か月で退院した。その後ACE阻害薬からARNIへの切り替えを行った。1歳3ヶ月現在、NT-proBNPは大幅に低下し、右心室平均GLSも改善した。【考察】血行動態悪化とdyssynchrony進行が心不全増悪の主因と考えられ、CRTで心機能は著明に改善した。単心室の心不全は心形態や心筋障害、房室弁逆流、容量負荷など多因子が関与する複雑な病態であり個々の症例に応じたCRT適応の判定が必要である。CRT pacing studyは単心室に対するCRT適応の判定に有用であると考えられた。