講演情報

[III-P01-4-09]度重なる肝静脈-心房内VVシャントの出現によりFontan failure を繰り返し, カテーテル的閉鎖でFontan takedownを実施した内臓錯位症候群の1例

丸山 篤志, 福山 隆博, 住友 直文, 小柳 喬幸 (慶應義塾大学医学部小児科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

フォンタン循環、Fontan takedown、静脈側副路

【背景】Fontan循環の破綻は, 静脈側副路(VVC)の発達による重症チアノーゼが原因となることがある. 今回, 無数の肝静脈-心房内VVCによりFontan循環の維持が困難となった症例に対し, Fontan導管をカテーテル治療で塞栓し, 安定したKawashima循環と同等の血行動態を得た症例を報告する. 【症例】12歳男児. 左側相同, 両房室弁右室挿入, 左室低形成, IVC欠損・奇静脈結合, 左上大静脈遺残. 日齢25でBTシャント, 1歳2か月でKawashima手術を実施. チアノーゼが残存し, 術後のカテーテル検査で, 下半身からの血流がすべて奇静脈-門脈シャントを介して左房に流入していた. カテーテルでシャント塞栓し, Kawashima循環に復した. 5歳で心外導管を用いたFontan術に到達し, SpO2 90%前後となった. 7歳時にSpO2が80%に低下し, Fontan導管狭窄と肝静脈-心房VVCを認め, 導管ステント留置とVVC塞栓し, Fontan循環に復した. 12歳時に再度SpO2が80%へ低下した. 塞栓困難な細く無数の肝静脈-心房内VVCを認め, Fontan循環への復帰は困難と判断された. 十分にICを実施し, AVPIIでFontan導管を閉鎖し, takedownを実施した. 肝静脈血流はVVCを介して心房内に流入し, 他の静脈血は肺に流れ, Kawashima循環と同等の血行動態を得た. CVPは12mmHgと不変, SpO2は87%に上昇した. 【考察】本症例では, 肝静脈-心房内VVCにより静脈血がFontan導管を肝臓方向に逆流し, 肺血流量が低下, 右左シャントによるチアノーゼを呈した. 7歳時にはVVCを塞栓でFontan循環を得られたが, 今回はVVCが細かく無数に存在し, 塞栓が困難だった. 破綻するFontan循環よりKawashima循環の方が者にとって有益と考え, Fontan takedownを実施した. 左側相同症では, 肝臓・門脈周囲に側副路が発達しやすく, Fontan循環の成立に大きな悪影響を与えると考えられた.