講演情報
[III-P01-5-02]声門下狭窄・重度呼吸不全に対する気管切開のさい、V-A ECMO併用した1例
○本田 義博1, 加賀 重亜喜1, 菊池 夏望2, 吉沢 雅史2, 須長 祐人2, 河野 洋介2, 長谷部 洋平2, 中島 博之1 (1.山梨大学 医学部 第二外科, 2.山梨大学 医学部 小児科)
キーワード:
呼吸不全、補助循環、気管切開
【背景】重症呼吸不全を伴う声門下狭窄に対し、ECMO補助併用麻酔管理下での気管切開を行った1例を報告する。【症例】症例は1歳男児、9kg。インフリキシマブ無効川崎病に対する血漿交換療法のための挿管呼吸管理後、声門下狭窄の症例であった。他院での経気道レーザー肉芽切除目的に転院待機中であったが、呼吸不全から転院困難であり当院で気管切開を行うこととした。【手術】ECMO導入待機下に麻酔導入。導入のち右頸部で総頚動脈および内頚静脈を露出した。喉頭鏡では声門下はpin-holeで挿管刺激での閉塞リスクを懸念しラリンジアルマスク換気としたが、血液ガス検査上PaCO2= 131mmHg, pH=6.96であり換気維持不可能と判断。ECMO補助下に気管切開を行うこととした。頚静脈脱血・動脈送血でカニューレ留置しV-A ECMO確立。ついで耳鼻咽喉科チームによる気管切開を施行、抗凝固併用による出血もなく4.5mmカニューレで換気を確立しえた。その後スムーズに補助循環離脱した。術後も出血性の合併症はなく、33日後に加療目的に転院し気管拡張施行した。【考察】重症呼吸不全症例に対する気管狭窄に対してECMO併用下に解除手技を行う報告は成人領域で散見される。呼吸不全に対するV-VECMO補助の有用性は小児領域でも認識されており、本症例でもV-V ECMOを考慮した。しかしECMO用double lumen catheterが当院導入なく、V-Vとするためには頸部・大腿2か所のアプローチを要することから、頸部アプローチでVA ECMOを選択した。長期ECMO管理下症例の気管切開では合併症として出血の増加が報告されているが、今回は一時的な補助循環であったこともあり問題を感じなかった。【結語】小児では成人にくらべ、上気道狭窄に関連した気管切開の頻度は少ないものの、高度な換気不全を伴う症例では有用な方法であると考えた。病態からはV-V ECMOのほうが適切と考えられるが、一時的な補助でありV-Aでも問題なく施行しえた。