講演情報

[III-P01-5-05]開心術後Well-leg compartment syndromeを来した1例

城 麻衣子1, 中田 朋宏1, 三浦 法理人1, 安田 謙二2, 中嶋 滋記2, 山崎 和裕1 (1.島根大学 医学部 心臓血管外科, 2.島根大学 医学部 小児科)
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キーワード:

cardiac surgery、well-leg compartment syndrome、complication

【はじめに】Well-Leg Compartment Syndrome (WLCS)は術中の体位によって健常な足に生じたコンパートメント症候群と定義される。今回我々は開心術後にWLCSを発症した症例を経験したので報告する。【症例】14才男児。身長172cm、体重67kg、BMI22.6。vAS/CoAに対して、日齢29:AVP/CoA repair施行(他院)。経年的にASRが進行し、今回手術介入となった。手術は、右大腿動静脈から送脱血管を挿入し人工心肺を確立、AVR施行。右大腿動脈には4Frシースを挿入して末梢送血も行っていた。心停止111分、人工心肺292分。術後鎮静鎮痛下に呼吸器離脱を進め、術翌朝(術後12h)抜管。覚醒に伴い、午後(術後17h)より右下腿疼痛の訴え出現。右下腿腫脹と熱感を認め、採血上CK/CK-MB=4159/88(術直後)→25581/255(術後9h)→43957/320(術後18h)と急激な上昇を認め、整形外科紹介。造影CTにて血管系に問題ないものの、右下腿ヒラメ筋・腓腹筋の低吸収化と腫脹を認め、右下腿の筋区画内圧(正常8mmHg以下)測定にて26-61mmHgと上昇を認め、コンパートメント症候群と診断、同日緊急で減張切開術施行(術後24h)。術後CKは速やかにpeak outし、術後2週間で正常化。段階的に閉創し、術後21日目に完全閉創。疼痛管理とリハビリに時間を要し、術後57日目退院。現在日常生活に支障なく独歩可能だが、足関節の軽度可動制限と、足先に感覚障害が残っている。【まとめ】WLCSは砕石位、男性、BMI≧25、手術時間≧4h、末梢血管障害の基礎疾患、年齢≦35歳などがリスク因子として報告されている。本症例は、本人の訴えから迅速に対応したが、術後鎮静鎮痛が疼痛の訴えをマスクし、早期の正確な診断が困難であった。本症例以前は開心術中の下肢の除圧は行っていなかったが、本症例以降、体格が大きな症例に対して2h毎の下肢除圧を行っている。今後もWLCSに対する知識をチーム内で共有し、発症予防・早期発見・早期治療に努めることが重要だと考える。