講演情報
[III-P01-5-06]低酸素療法およびイブプロフェン投与により心不全管理した孤立性右肺動脈欠損の極低出生体重児例
○岩崎 秀紀1, 水冨 慎一朗1, 中川 亮2, 久保 達哉1, 中村 太地1, 八木 英哉3, 井美 暢子1, 太田 邦雄1 (1.金沢大学 小児科, 2.石川県立中央病院 小児内科, 3.石川県立中央病院 新生児科)
キーワード:
イブプロフェン、孤立性一側肺動脈欠損、低酸素療法
【諸言】先天性一側肺動脈欠損は,主肺動脈が一側肺動脈にのみ繋がり,対側が主肺動脈との連続性ない疾患で,多くは心内構造異常を合併し孤立性はまれである.第6鰓弓の発生異常とされ, 多くは動脈管を有する. 無症状から早期に心不全症状を呈する症例まで幅広い臨床スペクトラムをもつ.今回,孤立性右肺動脈欠損の極低出生体重児においてイブプロフェン投与および低酸素療法により心不全管理した症例を経験した.【症例】母体妊娠高血圧症候群のため,在胎30週1日,体重1274gで出生した女児. 新生児呼吸窮迫症候群の治療後もチアノーゼが遷延し,心臓超音波検査で肺動脈形態異常を指摘され当院へ新生児搬送された.腕頭動脈から右動脈管を介して右肺動脈が起始し,孤立性右肺動脈近位部欠損と診断した.心不全が進行し,日齢2より低酸素療法,カテコラミンも併用したが,その後も臓器血流低下症状が増悪した.右動脈管の狭小化を図るため日齢8にイブプロフェンを単回投与し,すみやかに右動脈管が軽度狭窄し心不全の改善を得た.低酸素療法を継続管理し,その後も動脈管は適度な狭窄で維持された.予定日に2694gまで体重増加が得られた.右動脈管ステントおよび左動脈管閉鎖のカテーテル治療を行い,今後成長を待って根治術の予定である.【結語】孤立性一側肺動脈欠損の治療は一期的な外科的修復術とシャント術や動脈管ステント留置などで段階的に修復術を行う方法とがある.今回,低体重の影響もあり急性期に高肺血流性心不全を呈した.心不全に対して外科的片側肺動脈絞扼術も考慮されたが,低体重児における適正な指針もなく実際の手技の難易度も高い.今回慎重なモニタリング下のイブプロフェン投与により片側肺動脈絞扼術を回避し,体重増加を得ることができた.動脈管閉鎖のリスクを伴うものの,外科的介入のリスクが高い場合は動脈管に対する慎重な内科的アプローチが有用な選択枝となり得る.