講演情報
[III-P01-5-08]両側肺動脈絞扼術後の左右肺動脈不均衡発生の要因
○金子 政弘, 岡 徳彦, 友保 貴博, 松井 謙太, 森山 航 (自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児・先天性心臓血管外科)
キーワード:
両側肺動脈絞扼術、左右肺動脈不均衡、動脈管依存性体循環疾患
【背景】両側肺動脈絞扼術(bPAB)は動脈管依存性体循環疾患や、総動脈幹症(TrA)に対して施行される新生児期姑息術である。bPABにより新生児期開心術を回避できる一方で、左右肺動脈径の不均衡が問題となることがある。我々はHLHS variant、CoA complex、IAA、そしてTrAに対してbPABを先行する段階的手術を基本方針とし、左右肺動脈不均衡を回避するために、最終心内修復術に到達する前に積極的に経皮的肺動脈形成術もしくは外科的介入を行っている。【目的】bPAB後に左右肺動脈不均衡が発生する因子の検討。【方法】2017年4月から2023年12月までに最終心内修復術に到達したbPAB症例20例を対象。一方の肺動脈径が他方の75%未満である7例を左右肺動脈不均衡(Ubl)群とし、残り13例を左右肺動脈均衡(Bl)群として両群を比較検討。【結果】観察期間中央値は47か月(20~91か月)。疾患はUbl群でHLHS variant 4例、CoA complex 2例、Berry症候群1例であり、Bl群でHLHS variant 4例、CoA complex 5例、IAA 2例、TrA 2例。Ubl群vs Bl群でそれぞれ出生時体重、bPAB施行時日齢、左PA径、左右PA絞扼径で有意差を認めず。bPAB施行時右PA径は6.1±0.4mm vs 4.9±0.3mm(p=0.0171)でUbl群が有意に太かった。第二期にNorwood手術を施行したのはUbl群4例(57.1%)、Bl群4例(30.8%)、最終心内修復術までにPAに対してカテもしくは外科的に介入したのはUbl群3例(42.9%)、Bl群9例(69.2%)でそれぞれ有意差を認めず。ロジスティック回帰分析による多変量解析でbPAB術前の右PA径、Norwood手術が有意な因子であった。【結論】bPAB時の肺動脈径が太く絞扼が過度になった症例や、Norwood手術を要する症例では将来の左右肺動脈不均衡が発生する可能性が高いことが示唆された。bPAB時には左右の絞扼の程度が均等になるように心がけ、場合によっては心内修復術前に積極的に治療介入を考慮することが肝要であると思われる。