講演情報
[III-P01-5-09]両方向性グレン術後の肺循環不全では上大静脈酸素飽和度が低下する
○福岡 将治1, 永田 弾1, 中野 俊秀2 (1.福岡市立こども病院 循環器集中治療科, 2.福岡市立こども病院 心臓血管外科)
キーワード:
両方向性グレン、肺循環不全、低酸素血症
【はじめに】両方向性グレン(BDG)術後は様々な要因で低酸素血症を来す可能性がある. BDG術後に肺循環不全を来した自験例をもとに, BDG術後低酸素血症リスク因子について検討した.【対象と方法】2023年1月から2025年1月にBDG手術を行った52例を対象とした. 年齢,体重,術前カテーテルから得られた, 上大静脈血酸素飽和度(SsvcO2),下大静脈血酸素飽和度(SivcO2),肺動脈圧, 肺体血流比, 肺血管抵抗,肺動脈指数, 心室形態, 併存術式, 人工心肺時間, 循環停止時間, 術後のSsvcO2, SivcO2, 中心静脈圧, 上大静脈圧などの因子が術後の動脈血酸素飽和度(SaO2)および再挿管リスクに与える影響を解析した.【結果】右室型単心室が24例(48%), 房室錯位は4例(8%), 併存術式はNorwood手術が7例(13%)であった.術後SaO2は平均86.3 ± 3.9%(76.0~93.1%)で, 上大静脈圧は平均8.8 ± 2.2mmHg(5~14mmHg)であった.全例術後24時間以内に抜管した. 肺循環不全から再挿管に至ったのは2例だった. BDG術前肺循環指標はSaO2と相関しなかった. 術後のSsvcO2, SivcO2はSaO2と相関を示した(相関係数:0.46,p =0.014, 相関係数:0.49, p <0.01). 再挿管あり群ではSsvcO2が優位に低かった(34.4%± 2.7 vs 54.9%± 2.1, p=0.03). リスク評価ではSsvcO2, SivcO2のカットオフ値は37.0%(感度100%, 特異度96%, AUC 0.98), 60.7%(感度50%, 特異度38.5%, AUC 0.85)だった.【総評】SsvcO2, SivcO2は心拍出量と相関すると考えられるが, BDG術後のSsvcO2は肺循環不全のより鋭敏なマーカーになる可能性がある.