講演情報

[III-P01-5-10]小児心臓術後における中心静脈圧の代用としての推定糸球体濾過量の有用性

野竹 慎之介, 伊藤 怜司, 橘高 恵美, 古河 賢太郎, 馬場 俊輔 (東京慈恵会医科大学 小児科学講座)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

周術期管理、中心静脈圧、推定糸球体濾過量

【背景】成人領域においては、溢水で腎うっ血が進行することに伴う腎機能障害を呈することから、中心静脈圧(central venous pressure; CVP)と推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate; eGFR)の相関が報告されているが、小児領域に限定した既報告はなく、中心静脈圧の測定には中心静脈カテーテル留置などの侵襲的処置が必要になる。【目的】小児心臓術後の、CVPの代用としてのeGFRの有用性を検討する。【方法】2018年1月から2024年12月に当院で先天性心疾患に対して心臓手術を施行した患者を対象とし、診療録を後方視的に検討した。除外基準は、1か月未満の症例、死亡した症例とした。対象症例を人工心肺手術症例と、非人工心肺手術症例に分類し、さらに人工心肺手術症例を二心室循環症例、Glenn循環症例、Fontan循環症例に分類した。それぞれの解析群においてCVPとeGFRの相関を検討した。【結果】150例が抽出され、18例が除外された。男女比は69:63、月齢の中央値は13か月(1-192か月)、体重の中央値は6.6kg(2.06-63.6kg)であった。人工心肺症例が96例、非人工心肺症例が36例であった。また、人工心肺手術症例のうち、二心室循環症例が89例、Glenn循環症例が4例、Fontan循環症例が3例であった。二心室の人工心肺症例においては、CVPとeGFRの弱い相関が示されたものの(R2=0.22)、そのほかの解析群では相関は得られなかった。【考察】二心室の人工心肺症例の溢水の指標としてeGFRが有用である可能性が示された。非人工心肺症例でそう考えられなかったことに関しては、低月齢であることが多く、心臓術後のクレアチニンからは非現実的なeGFRが推算されてしまうことが原因と考えた。Glenn循環の症例、Fontan循環の症例に関しては、症例が少なく、議論できなかった。今後、小児集中治療領域全体への応用の余地があると考えた。【結論】二心室の人工心肺症例の溢水の指標としてeGFRが有用である可能性が示された。