講演情報

[III-P01-6-02]肺動脈性肺高血圧症モデルラットにおけるシリビニンの作用

川口 奈奈子, 張 ていてい, 羽山 恵美子, 古谷 喜幸, 中西 敏雄, 稲井 慶 (東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科)
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キーワード:

肺動脈性肺高血圧症、シリビニン、骨髄細胞

背景 以前本学会で、肺動脈性肺高血圧症(PAH)モデルラットにおける肺動脈、肺のCXCR4発現が上昇することを報告した。CXCR4はサイトカインの一種であるケモカイン(SDF1)の受容体である。さらに、CXCR4阻害剤であり、抗酸化作用、抗炎症作用を持つシリビニンがPAHモデルラットに対して右心室圧低下などの症状緩和効果を有することを報告した。シリビニンはマリアアザミの種子から抽出されるフラボノイドである。目的 CXCR4阻害剤プレリキサホル(商品名モゾビル)は、骨髄の造血幹細胞を末梢血中に動員させるために、多発性骨髄腫などの治療の一環としてG-CSFとともに用いられているので、シリビニンが作用する細胞が骨髄に存在すると考えた。また、PAHの症状と炎症が関連すると考えられているので、骨髄細胞に対するシリビニンの作用を検討した。方法 モノクロタリン投与と低酸素飼育(2週間)によって作製したPAHモデル(PAH)群およびコントロール(C)群由来の骨髄細胞を培養し、シリビニンおよびプレリキサホルに対する作用を遺伝子発現解析およびフローサイトメトリー解析により検討した。結果 シリビニンは、C群、PAH群両方において培養骨髄細胞のCXCR4発現を増加させたが、PAH群においてより上昇させた(qPCR)。プレリキサホルには同濃度でこのような作用は観察されなかった。さらに、シリビニン処理によってCXCR4発現細胞が増加すること、それは顆粒球とマクロファージであることが分かった(フローサイトメトリー)。結論 シリビニンは肺、肺動脈のCXCR4の発現を抑制するとともに、骨髄由来の細胞にも作用して、顆粒球、マクロファージを増加させる可能性がある。これにより、早く免疫が作用し、抗炎症作用によって肺動脈肥厚を抑制したと考えられる。また、シリビニンはプレリキサホルとは異なる作用をする可能性がある。