講演情報

[III-P01-6-04]マルチオミクス解析を用いたファロー四徴症における右室流出路狭窄の病態発生機序の解明

鈴木 浩之1,2, 笠原 真悟1,2, 小谷 恭弘1,2, 黒子 洋介1,2, 小林 純子1,2 (1.岡山大学学術研究院 医歯薬学域 心臓血管外科学, 2.岡山大学病院 心臓血管外科)
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キーワード:

ファロー四徴症、右室流出路狭窄、マルチオミクス解析

【背景】ファロー四徴症では肺動脈弁および右室流出路狭窄の程度により手術術式が変わり長期予後に大きく影響するが、その発生機序は解明されていない。本研究では、次世代シーケンサーを中心としたマルチオミクス解析によりファロー四徴症における右室流出路狭窄の分子生物学的病態解明を試みた。【方法】当院でファロー四徴症根治術を施行した患者14名から術中に切除した右室流出路心筋を採取しRNA sequencingおよびwhole exome sequencingを行った。根治術時の肺動脈弁輪径の大きさでA群 (z-score>-3, n=6)およびB群 (z-score<-3, n=8)に分け、2群間での発現変動遺伝子および関連遺伝子変異を検討した。【結果】2群間での有意な発現変動遺伝子は35個(false discovery rate: FDR<0.1)あり、A群よりB群で発現が増強した遺伝子が22個、発現が減弱した遺伝子が13個だった。GOエンリッチメント解析ではcell lineage map for neuronal differentiation、negative regulation of cellular component organization、organic anion transportが上位3位となった。35個の発現変動遺伝子についてwhole exome sequencingでは2群間で有意な遺伝子変異・バリアントは認めなかった。発現変動遺伝子のうち右室発生に関与するとされている遺伝子についてはHAND2を認め、A群に比較しB群で有意に発現減弱していた(logFC: -0.43, p<0.01)。【結語】マルチオミクス解析により、ファロー四徴症における右室流出路狭窄は遺伝子変異を伴わない遺伝子発現異常が病態発生機序となっており、また右室発生に関連する遺伝子であるHAND2発現低下が関与している可能性が示唆された。