講演情報

[III-P01-6-05]心内膜由来組織マクロファージは心臓の形態形成と恒常性維持に寄与する

劉 孟佳1,2, 中野 敦2 (1.熊本大学 国際先端医学研究機構, 2.カリフォルニア大学ロサンゼルス校 分子発生生物学)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

心内膜性造血、心臓マクロファージ、心内膜床

心臓がポンプとして効果的に機能するためには、胚発生中の適切な形態形成が重要だ。心臓の内部構造は短期間で劇的な変化を遂げ、新生児期に至るまでリモデリングが続く。心臓のルーピング後、流出路や房室管領域の心内膜細胞は内皮間葉転換(EndoMT)を経て心内膜床を形成し、最終的に心臓弁や中隔へとリモデリングされる。近年の我々の研究では、Nkx2-5の下流でNotchシグナルが活性化することにより、心内膜細胞がEndoMTと時空間的に一致して内皮造血転換(EHT)も行うこと、またこの心内膜性造血は心内膜床のリモデリングに寄与する組織マクロファージとなることが明らかとなった(Liu et al. Nat Commun. 2023; Liu & Nakano, Front Physiol. 2024)。これらの知見は、哺乳類における胚性造血が卵黄嚢や大動脈-生殖腺-中腎(AGM)領域でのみ行われるという従来の概念を覆し、心臓発生の新たな側面を提示するものであった。心内膜細胞由来の組織マクロファージは、常在型マクロファージとして成体心臓組織内に居続けるが、その役割は全くわかっていない。我々は、心内膜細胞系譜を持つ組織マクロファージのレポーターマウスおよび欠損マウスを用いて、局在と役割を解析した。その結果、心内膜由来マクロファージは血管や心臓弁に局在し、組織線維化を抑えている可能性を示唆するデータが得られた。以上から本研究は、心臓が胎生期の局所造血の場となって組織マクロファージを局所に供給することで、心臓の形態形成および恒常性維持に寄与することを示した。