講演情報

[III-P01-6-07]Pitx2変異マウス胚における房室中隔欠損症のデジタル3次元画像解析

三村 由依1, 竹下 直樹1,2, 佐波 理恵1,3, 榊 真一郎1,4, 八代 健太1 (1.京都府立医科大学 大学院医学研究科 生体機能形態科学, 2.京都府立医科大学 大学院医学研究科 小児科学, 3.京都府立医科大学 大学院医学研究科 放射線診断治療学, 4.東京大学 大学院医学系研究科 小児科学)
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キーワード:

房室中隔欠損、Dorsal mesenchymal protrusion、デジタル3D画像解析

Bicoid型ホメオドメイン転写因子 PITX2は、マウス初期胚の左の側板中胚葉で左右非対称に発現し、臓器の左側の形態を規定する。先行研究によれば、左右非対称なPitx2の発現を欠くPitx2 ΔASE/ΔASE変異マウスでは、房室中隔欠損症 (Atrioventricular septal defect; AVSD) を含む複雑先天性心疾患を生じることが示されている。房室中隔の形成には、右心房の下大静脈開口部付近から心房内腔に向けて突出する背側間葉突起 (Dorsal mesenchymal protrusion; DMP) とよばれる棘状の構造物が、重要な役割を果たすと考えられている。しかし、左右非対称なPitx2の発現とDMPの形成との関係は、多くが不明のままである。本研究では、左右非対称なPitx2の発現が心臓形態に及ぼす影響を精査するため、Pitx2 ΔASE/ΔASE変異マウス胚の心臓を、野生型マウス胚の心臓と比較し、特に房室中隔の形成過程に焦点を当て、デジタル3次元 (3D) 画像解析を行った。Pitx2を発現した履歴を持つ細胞を遺伝学的にEYFPで標識できる遺伝子改変マウスを用い、受精後13.5日の胚心臓に対して、心筋 (ミオシン重鎖) 、内皮または心内膜 (PECAM1) 、Pitx2発現細胞系譜 (EYFP) および核 (DAPI) に対し、全胚蛍光免疫染色を実施した。その後、CUBIC法による組織透明化を行い、光シート蛍光顕微鏡にて断層画像を取得した。得られた画像から3D画像を構築し、野生型と変異型の形態を詳細に比較した。その結果、Pitx2 ΔASE/ΔASE変異マウス胚ではDMPの欠失が確認され、これにより房室中隔欠損を生じたと考えられた。本研究により、DMPの形成には初期胚中胚葉における左右性の確立が必要であることが判明した。