講演情報

[III-P02-1-04]当院における両側肺動脈絞扼術を施行した両大血管右室起始症(DORV)症例に対する検討

前野 元樹1, 櫻井 一2, 野中 利通1, 櫻井 寛久1, 大河 秀行1, 大沢 拓哉1, 加藤 葵1 (1.独立行政法人地域医療機能推進機構 JCHO中京病院 心臓血管外科, 2.名古屋大学医学部附属病院 心臓外科)
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キーワード:

両大血管右室起始症、両側肺動脈絞扼術、完全大血管転位

【背景】両大血管右室起始症(DORV)の一期的修復が困難な症例において肺血流を制御するために両側肺動脈絞扼術(bilPAB)が選択される。当院で経験したDORVに対するbilPAB例において、一部で血流調整が不十分で早期の再介入が必要となる症例を経験した。本研究では再介入が必要となった因子を解析し、これらの管理上の課題について検討した。【方法】2012年1月から2024年12月の間にbilPABを施行したDORV患者8例を後方視的に検討した。再介入の有無で再介入群(n=2)と非介入群(n=6)に分け、二群間で比較し、再介入因子の解析とともに治療成績を検討した。【結果】再介入群では、術前のRPA径が5.9mmおよび6.0mm、LPA径が5.4mmと6.3mmと大きく、非再介入群のRPA径4.57(3.5-6.7)mm、LPA径4.43(3.4-7)mmと比較して有意に大きい傾向が認められた。また、再介入群では初回band径が大きい傾向があり、相対的にbandingが緩かったことが示唆された。一方、手術時体重には有意差を認めなかった(再介入群2.7kg、非再介入群2.5kg)。【考察】再介入群は術前の肺動脈径が大きいことが示唆された。この再介入を要した2例に関して、初回介入時にbanding部分の流速を3m/秒以上まで締めると酸素化の維持が困難であり、術中に酸素化の許容できる範囲で緩める必要があったが、術後数時間の経過で再度high flow傾向となり、術後1日目にtighteningを要する結果となった。特にDORVのうち大血管転位(TGA)を伴う症例では、酸素化の維持が困難であることも要因のひとつと考えられた。単心室・二心室修復のいずれの方針においても、過剰な肺血流や肺動脈低形成を防ぐため、術前評価・術中および術後のband調整を慎重に行う必要がある。【結論】DORVにおいて肺動脈径が大きい症例では、bilPAB後に再介入のリスクが高まる。適切な肺循環管理のため、術前の肺動脈径評価および術中・術後のband調整を慎重に行うことが重要である。