講演情報

[III-P02-2-03]当科でのシンフォリウム使用経験

柴田 深雪, 平田 康隆, 武井 哲理, 梶 翔馬 (国立成育医療研究センター 心臓血管外科)
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キーワード:

シンフォリウム、右室流出路形成、肺動脈形成

【背景】シンフォリウムは生体内吸収性糸と非吸収性糸から構成される編物に架橋ゼラチン膜を一体化した合成心血管パッチで2024年3月保険適応となった。心臓や血管に埋植されるとゼラチン膜が自己組織と置き換わりながら分解、吸収性糸が分解、非吸収性糸がほどけ伸張性の構造へ変化し自己組織が包むように形成、成長に伴った伸張性を有することが可能になる。当科でのシンフォリウム使用経験を報告する。【症例】2024年9月1日から2025年2月26日までで当科でシンフォリウムを使用した7例。男:女=5:2。手術時年齢は中央値11ヶ月(3ヶ月-2歳7ヶ月)、手術時体重は中央値8.3kg(5.3-12kg)。疾患内訳はファロー四徴症類縁疾患(TOF/DORV, PS)4例、完全大血管転位症(TGA)2例、完全型房室中隔欠損症(cAVSD)1例。術式はTOF/DORV repair4例、両側肺動脈形成(PA plasty)+右室流出路形成術(RVOTR)2例、cAVSD repair+PA plasty1例。【手術】TOF/DORV repairではRVOTに弁として0.1mm Goretex patchを縫着後、RVOT前面からPA分岐後までシンフォリウムを縫着、TGA1型の動脈スイッチ術後の両側PA plasty+RVOTRでは両側PA及びRVOT前面に縫着、cAVSD repair+PA plastyでは1次孔心房中隔欠損及びPA 前面に縫着した。【結果】術後観察期間は中央値50日(13-141日)、死亡例なし。全例で針穴出血及び自己組織との接着不良による出血を認め追加縫合及び止血剤による出血コントロールを必要とし、両側PA plasty+RVOTRの1例では出血コントロール困難でウシ心膜へ変更した。再開胸止血術の施行はなかった。その他の有害事象は現時点では認めていない。【まとめ】シンフォリウムは縫着時には従来品と比較すると出血の懸念からより慎重な運針、止血操作等を考慮する必要があるが、今後単心室症例でも検討していくと共に、これまでの治療で課題とされてきた異物反応による劣化と身体の成長への非追随性で発生する再手術リスクの低減を期待したい。