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[III-P02-2-08]体肺動脈短絡術後の房室弁逆流の推移

山口 章, 加藤 秀之, 平松 裕司 (筑波大学附属病院 心臓血管外科)
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キーワード:

体肺動脈短絡術、房室弁逆流、単心室

背景肺血流減少性先天性心疾患に対して十分な肺血流の維持、将来的な肺動脈の発育を期待し、体肺動脈短絡術は選択される場合がある。しかし術後、左房容量負荷の増大により房室弁逆流を増悪させる可能性がある。目的体肺動脈短絡術の周術期で房室弁逆流の推移について検討する。方法当院2013年から2024年、初回手術で体肺動脈短絡術を施行された患者を後方視的に検討した。根治的手術または第二期手術が施行されなかった、何らかの先行手術を受けた、または主要大動脈肺動脈側副動脈を伴う患者は除外した。主要アウトカムは術前、術後30日、次回手術時点の体心室房室弁逆流の推移とした。副次アウトカムは術前、次回手術時点における体心室拡張期径、体心室房室弁径、左右肺動脈径の変化とした。二心室群と単心室群に分けて検討し、さらに単心室群を共通房室弁型と非共通房室弁型に分類し検討した。結果42名が該当し、二心室群は18名、単心室群は24名であった。単心室群は二心室群に比べ術前から軽度以上の房室弁逆流をより多く有していた(6/18 vs. 18/24; p=0.008)。房室弁逆流の変化は周術期を通して有意差を認めなかった(二心室群, p = 0.90;単心室群, p = 0.06)。二心室群では体心室拡張期径、体心室房室弁径、左右肺動脈径の有意な増大を認めた(p<0.05)。単心室群ではいずれもこれらの有意な増大を認めなかった。単心室群において共通房室弁型の患者では術前から軽度以上の房室弁逆流を有することが多かったが、周術期の房室弁逆流の変化に有意差を認めなかった。結論二心室群、単心室群のいずれにおいても周術期の房室弁逆流の変化に有意差を認めなかった。しかし単心室群では術前から軽度以上の房室弁逆流を有することが多く、体肺動脈短絡術後に増悪する傾向にあると考えられた。また単心室群では体心室拡張期径、体心室房室弁径、左右肺動脈径の増大は第二期手術時点では限定的であった。