講演情報
[III-P02-2-09]術後胸水に対するステロイド治療の有効性
○熊江 優1, 崔 禎浩1, 松尾 諭志1, 八木 耕平2, 佐藤 大二郎2, 星 菜美子2, 大軒 健彦2, 川合 英一郎2, 新田 恩2, 小澤 晃2 (1.宮城県立こども病院 心臓血管外科, 2.宮城県立こども病院 小児循環器科)
キーワード:
術後胸水、ステロイド、ドレナージ
目的:周術期ドレーンの抜去後に胸水が再貯留することがある.ドレナージを回避しうる介入として,当院で心のう液に対するステロイドの有効性を報告してきた経験から,術後胸水に対するステロイド治療の有効性を検討した対象および方法:2009年1月から2024年12月までに介入を要する胸水貯留を認めた198例のうち,乳糜胸水77例を除いた121例において,ドレナージに先行して薬剤治療を行った37症例を対象とした.術後の胸水再貯留例に対し,壁側胸膜から10mm以下の液体貯留であり呼吸循環の安定している症例に対して,ドレナージに先行して保存的加療を選択した.壁側胸膜からの最大距離が減少したものを反応ありとし治療継続、2mm未満となった状態を改善,介入開始時と不変または増加を無効とし無効例はドレナージした.ステロイドはプレドニゾロン2mg/kg/dayの3日間内服投与を基本とした.ステロイドを用いた18例と,利尿剤のみでステロイドを使用しなかった19例に分けて検討した.結果:手術内容はステロイド使用群でTCPC10, BTS1, IAA1, UF1, ASD1, VSD1, TOF3例であった.非使用群はTCPC9, BDG1, BTS1, VSD3, TOF4, AVSD1例であった.当該介入開始までの期間は,手術日からは使用群で10.1日と非使用群の6.4日より長く(p=0.02),直近のドレーン抜去日からは使用群で4.9日と非使用群の3.2日と差を認めなかった.介入開始時の壁側胸膜からの最大距離は使用群で6.7mm,非使用群は6.8mmと差を認めず.使用群では100%改善を認め,改善まで1.9日,非使用群では74%改善を認めたが,4.0日であった(p=0.0005).TCPC症例でドレナージを回避したのは使用群100%,非使用群78%であった.結語:術後胸水に対するステロイド治療はTCPCを含む症例に対して有効であり,ドレナージを回避できる可能性が示唆された.