講演情報

[III-P02-4-01]肺血流動脈管依存性先天性心疾患の高肺血流に対する両側肺動脈絞扼術の有用性

酒井 瞭, 金 基成, 浅井 ゆみこ, 藪崎 将, 浦田 晋, 三崎 泰志, 小野 博 (国立成育医療研究センター循環器科)
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キーワード:

両側肺動脈絞扼術、肺動脈閉鎖症、単心室疾患

【背景】肺血流動脈管依存性先天性心疾患に対する治療戦略の第一段階はプロスタグランジン製剤等での動脈管の維持もしくは体肺動脈短絡術だが、特に出生体重の小さい児では肺血流量の管理に難渋したり、体肺動脈短絡術が高リスクとなる。両側肺動脈絞扼術は左心低形成症候群の治療戦略として用いられるが、当院では肺血流動脈管依存性先天性心疾患において動脈管開存を維持しつつ、高肺血流の回避を目的として両側肺動脈絞扼術を施行してきた。【目的】上記患者群に対して両側肺動脈絞扼術を行った例をまとめた報告はなく、短期成績を報告する。【方法】当院で2015-2024年の10年間において両側肺動脈絞扼術を施行した61例のうち、肺血流動脈管依存性先天性心疾患に対して施行した8例を対象とし、診療録より後方視的にデータを抽出した。【結果】8症例のうち、3例が心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症、4例が肺動脈閉鎖を伴う右側相同、1例が心室中隔欠損を伴う肺動脈閉鎖症であり、8例中7例が単心室疾患であった。在胎週数は33週1日から39週5日(中央値37週6日)、出生体重は1,651 g-3,210 g(中央値2335 g)であり、肺動脈絞扼術は日齢1から日齢62(中央値4.5日)に施行した。適応に関しては多呼吸・酸素飽和度上昇を理由に行った例が5例、呼吸症状に加え循環不全を呈した例が3例であった。3例で絞扼の再調整を要した。死亡例は2例でいずれも術前から循環不全症状と高度房室弁逆流を認めた。5例は次の段階の手術までに良好な体重増加が得られ、3例が両方向性グレン手術、2例が体肺動脈短絡術を受けた。【考察】高肺血流の肺血流動脈管依存性先天性心疾患に対して両側肺動脈絞扼術を行うことで、早期の体肺動脈短絡術を回避した例を経験した。一方で、房室弁逆流の制限の効果は限定的であった。【結論】高肺血流の肺血流動脈管依存性先天性心疾患に対して両側肺動脈絞扼術は治療選択肢となる。