講演情報
[III-P02-4-04]気管気管支狭窄を併発し、治療方針の決定に難渋した先天性心疾患6症例の臨床的検討
○鈴木 祐人, 板橋 立紀, 佐々木 大輔, 永井 礼子, 山澤 弘州, 武田 充人 (北海道大学 医学部 小児科学講座)
キーワード:
気管気管支狭窄、先天性心疾患、心疾患治療戦略
【背景】先天性心疾患を有する患者は、様々な併存症が生じうる。その中でも下気道併存症は換気障害の原因となるだけでなく、血行動態を悪化させることで心疾患の治療戦略に影響を与えることがある。【方法】北海道大学病院小児科で2000年から2024年の間に経験した、気管・気管支狭窄を併発した先天性心疾患の患児6症例(気管狭窄1症例、左気管支狭窄4症例、右気管支狭窄1症例)の臨床像について検討する。【結果】先天性心疾患の種類は大動脈縮窄症(CoA)・第五大動脈弓遺残、CoA・心房中隔欠損症、完全型房室中隔欠損症(AVSD)、AVSD・ファロー四徴症、左心低形成症候群、総動脈幹症、右側大動脈弓と多彩であった。6症例中3症例で染色体異常(21トリソミー2症例、22q11.2欠失症候群1症例)を認めた。下気道狭窄発見の契機は、心臓手術後の抜管困難・呼吸障害の原因検索が各2症例、肺高血圧症の原因検索・術前の胸部CTによる偶発的な発見(喘鳴は認めていたがCoAの症状と判断された)が各1症例であった。3症例で、先天性心疾患に対する治療戦略の変更を余儀なくされた。うち2症例で呼吸不全によるGlenn手術の延期および気管病変への早期介入を必要とし、1症例で低酸素血症の原因が無酸素発作か気管狭窄によるものかの判断が困難であり、介入までに時間を要した。狭窄への介入は、気管狭窄の1症例には気管形成術、気管支狭窄の5症例には外ステント術を行なった。左気管支狭窄の1症例は外ステント術後も気管支開存の維持が困難で、気管切開し陽圧換気を継続している。下気道狭窄に伴う死亡はなかったが、1症例が心臓手術後に、1症例は代謝性疾患を疑う全身状態の悪化により死亡した。【結論】先天性心疾患自体で呼吸障害を生じうることから、気管気管支狭窄の発見が遅れることが稀ではない。心疾患の治療方針にも多大な影響を及ぼすため、特に21トリソミー、大血管病変を伴う症例では、下気道狭窄併存の可能性に留意が必要である。