講演情報
[III-P02-4-05]慢性肺疾患既往、心房中隔欠損症を有する小児期発症重症肺動脈性肺高血圧症例の長期治療経過
○柏木 菜緒1, 田中 里奈1, 永松 優一1, 古川 晋1, 長原 慧1, 下山 輝義1, 櫻井 牧人1, 山口 洋平1, 石井 卓1, 土井 庄三郎2 (1.東京科学大学病院 小児科, 2.東京医療保健大学)
キーワード:
肺動脈性肺高血圧症、新生児慢性肺疾患、心房中隔欠損症
【背景】肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する肺高血圧(PH)治療薬併用療法の有効性は確立されているが、背景疾患を有するPAH症例の長期治療経過の報告は少ない。
【症例】22歳女性。早産超低出生体重児(在胎25週1日、610 g出生)、CLDに対して1歳まで在宅酸素療法を使用されていたが、その後は発育良好であった。8歳時、労作時呼吸困難を契機にPHが疑われた。その際の心エコーで径8 mmの心房中隔欠損症(ASD)を認めた。初回心臓カテーテル検査時、平均肺動脈圧(mPAP) 95 mmHg、肺血管抵抗係数(PVRI) 32.1 WU/m2、肺体血流比0.9であった。既知の遺伝子変異はなく、重症特発性肺動脈性肺高血圧症IPAHと診断し、ボセンタン、ベラプロスト、タダラフィルによる併用療法を開始した。1年後、PVRI 12.5 WU/m2、mPAP 70 mmHgであり、ベラプロストからエポプロステノール静脈注射に変更した。10歳(治療開始後2年)時、mPAP 39 mmHg、PVRI 3.7 WU/m2へ改善し、一方で肺体血流比は2.4まで上昇した。このため、経皮的ASD閉鎖術を施行し、閉鎖後1年半時にはmPAP 19 mmHg、PVRI 2.7 WU/m2へ低下した。その後、中心静脈カテーテル感染を反復したことから、トレプロスチニル皮下注射、イロプロスト吸入を導入し、エポプロステノールを漸減終了した。その後も肺高血圧の悪化はなく、セレキシパグを開始しトレプロスチニルの皮下注射を漸減終了した。21歳(ASD閉鎖後8年)時、内服・吸入治療薬を継続しているが、mPAP 25 mmHg 、PVRI 7.1 WU/m2と軽度の肺高血圧所見を認めている。
【考察】本症例では早産に伴う未熟な肺血管床、CLDによる肺障害といった背景があり、そこにASDによる高肺血流が加わったことで、小児期に高度のPVRIの上昇を来したと考えられた。PH標的治療薬への反応は非常に良好でASDも閉鎖可能だったが現在もPAHは認めている。併存疾患のあるPAH症例では初期から遠隔期まで治療反応性をみながら慎重に方針を検討する必要がある。
【症例】22歳女性。早産超低出生体重児(在胎25週1日、610 g出生)、CLDに対して1歳まで在宅酸素療法を使用されていたが、その後は発育良好であった。8歳時、労作時呼吸困難を契機にPHが疑われた。その際の心エコーで径8 mmの心房中隔欠損症(ASD)を認めた。初回心臓カテーテル検査時、平均肺動脈圧(mPAP) 95 mmHg、肺血管抵抗係数(PVRI) 32.1 WU/m2、肺体血流比0.9であった。既知の遺伝子変異はなく、重症特発性肺動脈性肺高血圧症IPAHと診断し、ボセンタン、ベラプロスト、タダラフィルによる併用療法を開始した。1年後、PVRI 12.5 WU/m2、mPAP 70 mmHgであり、ベラプロストからエポプロステノール静脈注射に変更した。10歳(治療開始後2年)時、mPAP 39 mmHg、PVRI 3.7 WU/m2へ改善し、一方で肺体血流比は2.4まで上昇した。このため、経皮的ASD閉鎖術を施行し、閉鎖後1年半時にはmPAP 19 mmHg、PVRI 2.7 WU/m2へ低下した。その後、中心静脈カテーテル感染を反復したことから、トレプロスチニル皮下注射、イロプロスト吸入を導入し、エポプロステノールを漸減終了した。その後も肺高血圧の悪化はなく、セレキシパグを開始しトレプロスチニルの皮下注射を漸減終了した。21歳(ASD閉鎖後8年)時、内服・吸入治療薬を継続しているが、mPAP 25 mmHg 、PVRI 7.1 WU/m2と軽度の肺高血圧所見を認めている。
【考察】本症例では早産に伴う未熟な肺血管床、CLDによる肺障害といった背景があり、そこにASDによる高肺血流が加わったことで、小児期に高度のPVRIの上昇を来したと考えられた。PH標的治療薬への反応は非常に良好でASDも閉鎖可能だったが現在もPAHは認めている。併存疾患のあるPAH症例では初期から遠隔期まで治療反応性をみながら慎重に方針を検討する必要がある。