講演情報

[III-P02-4-09]小児のIPAHに対しトレプロスチニル吸入が奏功した一例

佐藤 光央, 川村 悠太, 清水 由律香, 川合 玲子, 高月 晋一 (東邦大学医療センター大森病院 小児循環器科)
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キーワード:

肺高血圧、トレプロスチニル、右心不全

【背景】トレプロスチニルは半減期が長く、温度安定性が高いプロスタグランジンI2誘導体(PGI2)である。吸入療法では、気道を経て直接肺動脈に送達されるため、吸収された周囲の肺動脈に直接拡張作用をもたらす。成人の特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)に対してトレプロスチニル吸入療法は有効性が示されており、2024年に本邦でも承認された。小児のIPAHに対してトレプロスチニル吸入療法が著効した症例を経験したので報告する。【症例】12歳、女児。10歳時に運動時の易疲労感と失神を認めた。心電図上、P波増高とT波異常を認め、心エコー上、著明な右心系拡大とsevere TR、TRPG 37mmHg、NT-proBNPの上昇(4000 pg/ml)を認めた。家族歴はなく合併疾患は否定され、IPAHと診断された。入院時は、右心不全症状が強く、安静、酸素投与、カテコラミン投与を継続し初回の心臓カテーテル検査を施行した。平均肺動脈圧(mPAP)32mmHg、肺血管抵抗(PVRi)12.4 WU/m2、心係数(CI)2.3 L/min/m2であり、タダラフィル、ボセンタンの内服を開始した。治療後6か月目のカテーテル検査で、baseline(BL)、一酸化窒素吸入(NO)およびトレプロスチニル吸入(Tre)負荷試験を行った。BLに比してNO負荷と同程度までTre負荷でも改善を示した(BL vs NO vs Tre:mPAP 26 vs 14 vs 14mmHg (-46%)、PVRi 4.2 vs 2.3 vs 2.2 WU/m2 (-47%)、CI 3.7 vs 3.5 vs 3.6 L/min/m2 (-2%)。カテーテル中に覚醒した際に、急激なmPAP上昇を認めたことから肺血管攣縮による急性増悪の可能性が高いと判断し、Tre吸入療法の併用を行い継続中である。【結語】小児のIPAHに対しトレプロスチニル吸入療法を導入し、治療反応良好な症例を経験した。