講演情報

[III-P02-5-02]急速な経過で心原性ショックを来した房室回帰頻拍の新生児例

甲斐 蘭七1, 前田 靖人2, 津田 恵太郎2, 鍵山 慶之3, 家村 素史2, 須田 憲治3, 前野 泰樹1 (1.聖マリア病院 新生児科, 2.聖マリア病院 小児循環器内科, 3.久留米大学 医学部 小児科学講座)
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キーワード:

新生児不整脈、房室回帰頻拍、Coumel現象

【症例】14生日の男児、38週4日、2462gで仮死なく出生した。心雑音のため12生日に近医小児循環器クリニックを受診した際は全身状態良好で頻脈はなく、心内構造異常はなく心機能も正常であった。14生日の深夜3時に通常通り哺乳したが朝7時より哺乳意欲がなく、13時に口唇チアノーゼと努力呼吸が出現し15時頃に近医を再受診し頻脈と循環不全、左室収縮不良を指摘され当院に紹介入院した。受診時皮膚は著明に蒼白で冷感ありHR 280bpm前後の頻脈と直腸温35.0度の低体温を認めており、血液ガス分析ではpH 6.744、pCO2 83.1、HCO3 10.7、BE -26.2、Lac 18.0mmol/Lと混合性アシドーシスの状態であった。12誘導心電図検査ではnarrow QRS頻拍であり、心エコー図検査では構造異常はないが左室駆出率は30%程度であった。呼吸循環サポートを行いながらATPの急速静注を行ったところ房室ブロックの後発作は停止し、直後の心エコー図検査で左室駆出率は正常に復帰し循環動態は安定した。リエントリー性頻拍を疑う状況だったがP波が明確でなく診断に至らなかったが、頻拍発作を入院24時間内に繰り返しており脚ブロック波形とnarrow QRS波形の異なる頻拍が混在していた。頻拍中にアイスバッグ法を試みたところ波形が脚ブロックからnarrow QRSに変化しHRが250から270bpmへと上昇し、Coumel現象と判断し房室回帰頻拍と診断した。プロプラノロールを投与開始したが、発作が頻発しプロカインアミドに変更し発作頻度は減少した。【考察】本症例では48時間前には正常心機能であり、最長でも受診時の12時間前は通常通りの様子であり比較的短時間で急速にショック状態となったと考えられる。侵襲的な検査を行いにくい状態の新生児においてCoumel現象は頻拍の原因診断に有用であった。