講演情報
[III-P02-5-04]新生児期に発症した特発性心室頻拍の2例
○鈴木 謙太郎1, 松本 和希1,2, 朱 逸清1,2, 森本 美仁1, 山本 英範1, 郷 清貴1, 深澤 佳絵1, 加藤 太一1, 大橋 直樹1, 吉田 修一朗2 (1.名古屋大学医学部附属病院 小児循環器センター 小児科, 2.JCHO中京病院 中京こどもハートセンター 小児循環器科)
キーワード:
infant ventricular tachycardia、neonate、ventricular tachycardia
<背景>新生児期の頻脈性不整脈の多くは上室性頻拍(SVT)であるが、まれに背景疾患のない特発性心室頻拍(IVT)を認めることがある。本邦でも新生児期の特発性VTの発症頻度はきわめて低いとされるが、今回新生児期に発症したVTの2症例を続けて経験したため報告する。<症例>症例1:在胎31週3日、出生体重1307g。日齢50に啼泣を契機にHR230bpmの左脚ブロック(LBBB)型のVTを発症。ATP急速静注で洞調律化。Landiolol持続静注を導入したところ以降は再燃なし。Propranolol内服に切り替えて退院。以降は再燃なく経過している。症例2:在胎34週5日、出生体重1786g。日齢7頃より心室期外収縮(PVC)が散見され日齢12にHR180bpmのLBBB型の非持続性VT(NSVT)が出現した。覚醒や啼泣で頻度は増加しPropranolol、およびAmiodarone内服を開始するも無効。一方で発作中もバイタル変動はなく血行動態は安定していたためAmiodaroneを中止した上で外来移行としたところ、生後3か月頃に完全に洞調律化した。<考察>今回経験した2例はいずれも心電図上LBBB型を示した。症例1では明らかなRVOT起源であり、VT rateがHR230bpmと速かったが、ATPが奏功しβ遮断薬により再燃なく経過した。一方、症例2はLVOT起源が疑われたが、VT rateは180bpmと比較的遅く、抗不整脈薬への反応は乏しかったものの血行動態への影響が小さかったため、慎重な経過観察が可能であった。文献的には、新生児期発症のIVTの多くは自然軽快または薬物療法で制御可能とされ、概ね予後良好と報告されている。しかし、小児期以降のIVTのなかには致死性不整脈へ移行した稀な報告もあり、安易な経過観察は禁物である。重症化因子は未解明な部分が多いものの、VT rateの速い症例では循環破綻に至るリスクが否定できず、β遮断薬を含む早期介入が重要と考える。